ファッショニスタにして大人のライフスタイルの実践者、中井貴一さん。様々な役を演じ分ける実力派ながら、地方で畑づくりにも勤しむ松山ケンイチさん。お二人が共演する映画『大河への道』を入口に、話題は今、大切なことに広がっていく。
【中井貴一】&【松山ケンイチ】“今の時代”に大切なこと。
映画にそのまま投影された二人の関係性とは?
中井 実は松山君が革ブランドを始めるんで、M.E.に紹介したいんですよ(笑)。
――それは興味深い!! その前にまず中井さんと松山さんが共演される映画『大河への道』のお話を。立川志の輔さんの落語が原作だとか?
中井 『メルシー! おもてなし』という志の輔さん原作の舞台を2016年にパルコ劇場でやりまして、それを見た知人から『大河への道』という志の輔さんの落語を元に、中井さんがやられたら面白いでしょうねと言われたんです。それで志の輔さんと対談した際に、その落語をぜひ拝見したいと言ったら「近々にはやりません」と(笑)。「でもご興味がおありなら」とDVDを貸してくださった。それを見て、これって映画になるんじゃないかな、と思ったのが最初です。
――日本初の地図を作った伊能忠敬を主人公とする大河ドラマの実現に向けて、出身地、千葉県香取市役所の人々が動き出すストーリーですね。
中井 最初の企画段階では、自分が出演する気はなくて裏方に回るつもりでした。時代劇と現代劇をつなぐ企画を提案しながら、松山君がやってくれたらおもしろいんじゃないか、と思っていて、自分もやることになった瞬間から「松山ケンイチじゃなきゃイヤだ!!」ってなりまして(笑)。
松山 貴一さんとご一緒できるのはすごく光栄なことですし、『大河への道』の落語にも脚本にも心を動かされて、ぜひやらせて頂きたいというお話をして。
中井 共演は大河ドラマ『平清盛』以来10年ぶり。でも、いつもそこにいるような気にさせられる存在なんです。
松山 お互いが近くで撮影しているときに、現場に遊びに行かせて頂いたり、ゴハンをご一緒させて頂いたり。頻繁に連絡を取るわけじゃないんですが、貴一さんはこういう方、僕はこういうちゃらんぽらんなヤツ、みたいな役割分担というか共通認識みたいなものができ上がっていて、楽しいんです(笑)。僕は人と話すのが苦手だったりするのですが、貴一さんの前では好き勝手に何でも言えてしまう。ホントに甘えてますね。僕にとって貴一さんは、そういう存在。そのノリがこの映画での市役所の上司と部下や、伊能忠敬亡き後をまとめる天文学者の高橋景保と助手の又吉の関係性に確実に反映されていると思います。
――映画を拝見して印象的だったのが、中井さん扮する市役所の池本主任のジャンパー姿。デビュー間もなくの『ふぞろいの林檎たち』の仲手川良雄や、10年前の人気ドラマ『最後から二番目の恋』の鎌倉市役所課長・長倉和平、それから以前インタビューさせて頂いた際、先輩俳優の小林桂樹さんに「お前は王道を行け。アウトローではなく、役者にとってサラリーマンに見えることが大事なんだ」と言われた、とおっしゃっていたことも思い出しました。
「憧れよりも、“その時代”と同じ呼吸をできる人間でありたい」
――中井さん
中井 役者っていろんなタイプ、多様性が必要だと思いますが、やっぱりカッコよく思われたい。でもみんながそうだったら、なんの面白味もない。僕はデビューしてずっと、その時代に生きている人間をどう演じるか、同じ呼吸をしている人間を演じられる役者でいたいと思ってきたんです。憧れを持たれるよりも、一緒に頑張りましょうねって。ジャンパーや作業着で頑張っている人たちがいて、彼らが日本を支えているんだということを、僕たちはどこかで出していかなくてはいけないと思いますから。