世界の注目を集めるマツダの今が詰まったミドルサイズSUV
日本車らしからぬデザインと日本車の高い性能が見事に融合
数ある国産車メーカーで、デザインに対するコダワリと実力でマツダは図抜けた存在だ。2011年に発表したコンセプトカー、靭を筆頭にアテンザ(現マツダ6)、ロードスター、ヴィジョンクーペ、マツダ3、CX-30など、多くのモデルが世界中の権威あるデザイン賞を受賞している。
優れた経済性や信頼・耐久性によって成功を収めた日本車だが、エモーショナルな領域では輸入車の後塵を拝してきたのも事実。そんななか、CAR as ARTを標榜するマツダのデザインは、間違いなく世界のトレンドを引っ張る存在になっている。仕事柄、世界中の自動車デザイナーにインタビューをする機会があるが、デザイン面でいまもっとも注目している会社は?という問いに対し、「マツダ」という答が返ってくる確率は驚くほど高い。
遠目に見てもマツダと分かるラインナップのデザイン
現在、軽自動車を除くマツダのラインナップは乗用車系がマツダ2、マツダ3、マツダ6の3車種。SUV系がCX-3、CX-30、MX-30、CX-5、CX-8の5車種。そこにオープン2シータースポーツであるロードスターが加わった合計9車種となる。
興味深いのは、すべてのデザインが同じ方向を向いていることだ。だから、どのモデルを見ても一発でマツダ車だとわかる。大きくても小さくても、あるいはハッチバックでもセダンでもSUVでも、そこにはマツダワールドがきちんと展開されている。デザインの最上位概念に「らしさ」を置くのはヨーロッパのプレミアムメーカーが得意としてきた方法だ。メルセデス・ベンツはSクラスからAクラスまで共通したデザイン言語で仕上げられているし、BMWやアウディもそう。マツダの狙いもそこにある。アテンザをマツダ6に、デミオをマツダ2に改名したように、マスコットネームをやめてブランドネーム+数字とアルファベットというネーミングポリシーに変更してきたのも、個々のモデル名ではなくマツダというブランドネームを前面に押し出すのが狙いである。そんなマツダの世界観を購入体験としても味わって貰うべく、黒を基調とした上質な店舗作りを進めているのもマツダのコダワリだ。
そんななかマツダの中核モデルに位置づけられるのがミドルサイズSUVのCX-5だ。マツダが誇るSkyactivテクノロジーをフル投入した現行モデルは、累計販売台数100万台を超える大ヒット作となった初代のコンセプトを受け継ぎつつ、より洗練されたデザインに仕上がっている。なかでも、伸びやかなノーズが生みだすスポーティなフォルムと、光の反射まで計算し尽くした巧みな面造形がデザイン上のトピック。漂う色気と高い質感は、上質なライフスタイルを求める大人にピッタリだ。いまやSUVは珍しい存在ではなくなったが、数あるSUVのなかでもCX-5のデザインは出色の出来映えだと思う。なお、昨年末に実施された大幅改良によってフロントとリアの意匠を変更。ヘッドライトとリアコンビランプにはLEDを採用し、モダンな印象を与えている。