タイミングも悪かった。14年ぶりのモデルチェンジがコロナ禍真っ只中。ただでさえ生産に遅れが出る状況で発表された新型300系のスタイリングが、またいかにもランクルらしいカッコよさであったため、日本はおろか世界中のファンが狂喜乱舞。エンジンもガソリン・ディーゼル共に新開発だというし、GRスポーツから新たなグレードも出ると分かって、人気に拍車が掛かる。その上、いち早く手に入れて海外市場への転売を目論む業者の複数台オーダーも入り乱れ、ランクル史上かつてない空前のブームが沸き起こってしまった。実際、昨年末には某業者向けオークションにて1600万円で落札された。10%の消費税や業者のマージンを考えると、売値は少なくとも2000万円。円安を利用した海外バイヤーとしか考えられない。
トヨタがたとえ増産体制をとってくれたとしても、日本のファンはまだまだ安堵はできない。なぜなら、ランクルの人気はワールドワイド。これまでも生産台数のほぼ9割の仕向け先が中東やオーストラリア、ロシアなどで、言ってみれば彼らは“トヨタ ランクル社”の最重要顧客。日本などは残り1割の一部でしかないわけだ。よってランクル300の異常事態はしばらく続くことになるかもしれない。
スーパーカーならまだしも、欲しくても今すぐどころか半年待っても買えない実用車を紹介することは気がひけるのだが、キリンのように首を長くして待つ甲斐があると確信を深めてもらえるか、さもなくば他のモデルに興味を移していただく機会になるか、はたまた話のネタとして仕入れてもらうか、新型ランクル300を長距離ドライブで試したインプレッションをリポートしておこう。