真の姿はサーキットでしか分からない
試乗車はブリリアントブルーマグノというマットカラーで、今どき珍しい左ハンドル仕様だった。メルセデスはE450やAMGモデルでは、まだ左右のどちらも選べるようにしている。年々、右ハンドルしか選べないモデルが増えつつある中で、うれしい配慮だ。アクセルやブレーキといったペダル配置の観点からいえばオフセットがなく、やはり左ハンドルのほうが操作はしやすい。

エンジンスタートボタンを押すと、600psオーバーのエンジンがあっさりと目覚める。コラム式のATシフトをDレンジに入れて走りだせば、まるで普通のEクラスのようだ。足回りには、減衰力可変式の3チャンバー式エアサスペンションを採用しており、街乗りでコツコツと突き上げられるような硬さはない。
また、さすがにハイパフォーマンスモデルといってもいまは環境への配慮は不可欠であり、エンジンが低負荷状態になると、半分の4気筒を休止する機構が備わった。気筒休止システムはその作動を体感することが難しいが、休止中はメーター内にV型に並んだピストンと4の数字を組み合わせたアイコンが表示されるよう可視化されていて、一般道や高速道路でもたびたび見ることができた。
ドライブモードは「コンフォート」をはじめ、「スポーツ」「スポーツ+」「インディビジュアル」という4つに加えて、さらに「レース」モードも用意される。ここではESP(横滑り防止装置)をオフにし、さらに駆動方式を4WDから駆動配分を0:100の完全なFR後輪駆動へと切り替えるドリフト・モードも選択可能となる。
「スポーツ+」を選択するとスポーツエグゾーストに切り替わり、獰猛な排気音を奏でる。試しに高速道路の料金所でアクセルペダルを踏み込んでみるも、850Nmものトルクが一気に立ち上がりあっという間に制限速度に到達してしまう。やはり、このクルマの真の姿を知るにはサーキットなどクローズドな場所に行くほかない。
今年7月、メルセデスは2030年までに電気自動車専業メーカーへの転身を宣言。そして9月のミュンヘンで行われたモーターショーIAAで、AMG初のプラグインハイブリッドカー「メルセデスAMG GT 63 S E PERFORMANCE」を発表した。おそらくこのV8エンジンは、最後の電動化されていない内燃機関になるだろう。実はいま世の中を騒がせている半導体の問題もあって、この63シリーズは販売休止になっている。個人的には“One man – one engine”が出来るだけ続けられることを、望むばかりだ。
文=藤野太一 写真=茂呂幸正 編集=iconic






