Sクラスに勝るとも劣らないレベルの最新モデル
BMWといえばメルセデス・ベンツの長年にわたる好敵手で、各セグメントで激しい戦いを繰り広げているが、ひとつだけ、どうしてもメルセデスに歯が立たないクラスがある。
メルセデスでいうところのSクラス、BMWでいえば7シリーズに相当するフルサイズ・サルーンクラスが、それである。
このカテゴリーでは世界的に見てSクラスの圧勝。メルセデスの、高級車メーカーとしての長い伝統がそうさせるのか、それとも快適性や静粛性(それも特に後席において)の作り込みのうまさに一日の長があるからなのかはわからないが、このセグメントに関してはSクラスが絶対王者で、7シリーズはその後塵を拝する立場に甘んじてきたのが実情である。
自分たちの個性を織り交ぜながら、Sクラスの牙城を打ち崩そうとして何度も勝負を挑んだBMW。しかし、手を替え品を替えて挑戦してもライバルを倒すことができないことに気づいたバイエルンの技術者たちは、「Sクラスのいいところは素直に学び取ろう」という境地にたどり着いたのではないかと私自身は捉えている。
こうした戦略(といっても、あくまでも私の個人的な推論だが…)に基づいて開発された近年の7シリーズは、同時期のSクラスに肉薄するほどの静粛性や快適性を実現。とりわけ、かつてはSクラスに大きく差をつけられていた後席の乗り心地は、最新モデルではSクラスに勝るとも劣らないレベルに到達している。おかげで、BMWらしいハンドリングのキビキビ感はやや削がれたものの、フルサイズ・サルーンとしての総合的な商品力は極めて高いと評価できる。