安心快適で速い、ラグジュアリーな“リムジン”
そしてアルピナらしさは、シャシー性能にあらわれている。電子制御式のダンパーに独自のチューニングを施し、ベースのBMWにはない“コンフォートプラス”モードを設定。これにコンフォートでラグジュアリーな乗り心地からよりスポーティなものまで幅広い性能を持ち合わせている。足元にはアルピナのトレードマークといえる20スポークデザインの20インチ鍛造ホイールを採用することで、バネ下重量を約25%軽減。また専用開発されたタイヤ(ピレリ製P-ZERO)によって、気持ちのいいハンドリングと快適性を両立している。
BMWのMモデルが、サーキットでの速さを追求しているのに対して、歴代のアルピナが目指すものは、ラグジュアリーかつ安心快適でそして速い、リムジンである。5シリーズのセダン、しかもディーゼルエンジンのモデルをこれほど上質なラグジュアリースポーツサルーンに変貌させるのだから、さすがというほかない。通な人はその仕立てを“アルピナマジック”と形容するが、まさに裏地や細部にまでこだわったテイラーメイドのスーツを纏うかのような心地よさが味わえる。車両価格は1358万円。違いの分かる人にとっては決して高くはないと思う。
文/藤野太一 写真/デレック槇島、ニコルオートモビルズ 編集/iconic