ワインディングもリラックスしてステアリングを握っていられる
実際に試乗すると、sDrive20iは思いがけず迫力ある走りを披露してくれた。
箱根のワインディングロードでは、10%を超す上り勾配であることが信じられないくらい豪快な加速を示してくれたうえ、レスポンスも極めて良好でコーナリング中の微妙なアクセルワークにもしっかりと追随してくれる。しかも、回転フィールが4気筒とは思えないほど滑らかで、パワー的にもフィーリング的にも物足りないとはまるで思わなかった。
いっぽうの足回りは、率直にいってM40iよりもsDrive20iのほうが好ましいと思うシーンが多かった。
まず、市街地ではサスペンションがしなやかにストロークして、とても滑らかな乗り心地が味わえる。段差の乗り越えでは軽いゴツゴツ感が伝わってくるけれど、頑丈なボディがその振動をすぐに抑え込んでくれるので不快な感じはまるでしない。硬いけれど良質。そんな乗り心地だ。
足回りのしなやかさはワインディングロードでも好印象を生み出してくれた。M40iはソリッドな足回りゆえに、路面が波打っているとそれにあわせてステアリングが左右にとられる傾向があった。これはこれで、BMWのスポーツモデルに乗り慣れているドライバーをニヤッとさせるポイントなのかもしれないが、ワインディングロードをさらーっと流したい私のような人にとってはせわしなくていけない。ところが、このsDrive20iだったら多少荒れた路面でも何ごともなかったかのようにやり過ごす懐の深さがある。おかげでワインディングロードもリラックスしてステアリングを握っていられる。この点が、私にはsDrive20iとM40iの決定的な違いに思われた。
ただし、限界的なコーナリングに近づくと、sDrive20iでもステアリングを軽く左右にとられるようになるので要注意。もっとも、その程度はごく軽いし、そもそも根っからの走り屋でもない限りそこまでペースを上げることもないだろうから、そんな心配をする必要もないだろう。
つまり、Z4 sDrive20iは市街地からワインディングロードまで、さらーっと気持ちよく走るのが得意なオープン2シーターなのである。おまけに価格はM40iより173万円も安い682万円。Z4を軽やかに走らせたいアナタにおすすめの1台である。
文/大谷達也 写真/茂呂幸正 編集/iconic