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熟成を重ねた、ラグジュアリィを語れる現行モデル

4代目グランドチェロキー
2011年に現行モデルとなる4代目へと進化。代を重ねるごとに大きくなったボディサイズは全長4825×全幅1935×全高1785mmに。ジープ初のエアサスペンションも用意された。

グランドチェロキーのライフサイクルはここまで約5年だったが、2010年に登場した4世代目(現行型)は、最長となる10年を超えるモデルとして、現在も販売が続けられている。その事情はご存じのとおり、クライスラーブランドが投資会社であるサーベラスへ売却され、その後、フィアットグループ傘下に入るといった激動に巻き込まれたため。しかし、グランドチェロキーにとってそれは悪いことばかりではなく、今振り返るとプラスに働いた事柄が多くあったとも言える。

ハイパフォーマンスモデルのSRT8
468psを発生する6.4リッターV8エンジンを搭載したハイパフォーマンスモデルのSRT8。エアロパーツなども備え、オンロードをメインとしたモデルに仕立てられている。

そのひとつが、メルセデス・ベンツ Mクラスとプラットフォームを共用し、グランドチェロキーの立場から言えば、かつてないほどのアッパークラス感を手に入れられたことだ。スタンダードとなるV6エンジンはクライスラーオリジナルだが、アッパークラスをターゲットとしコストがかけられたこともあって、そのフィーリングは十分にラグジュアリィを語れるものだった。

型遅れではあったがメルセデス・ベンツに広く採用されていた5速ATを組み合わせた(当時のMクラスは7速ATだった)ことで、ジェントルなフィールも手に入れていた。オフロード走破性は、車高調整機能、トラクションコントロールといった制御系に任せ、オンロードにおける快適性や操縦性を追求するために4輪独立懸架式サスペンションを採用、これもラグジュアリィを語る性能に欠かせないものであった。

ちなみに、本国ではレギュラーモデルでもV8エンジンをラインナップしているが、日本仕様は上級グレードであるリミテッドでもこのV6に統一。先代同様にサーキットパフォーマンスを誇るSRT8(本国ではSRT)に専用チューンを施したV8ユニットを搭載することで、アメリカ車の骨頂であった大排気量主義を強くアピールしている。

バイキセノンランプやLEDテールランプなどが装備されたグランドチェローキー
2013年にはマイナーチェンジを実施、バイキセノンランプやLEDテールランプなどが装備された。最大のポイントは従来の5速から8速ATへと変更されたこと、それに合わせてパドルシフトも備わっている。
グランドチェローキーのインテリア

現行のライフサイクルがグランドチェロキーとしては異例であるが、当初は、ここまで引っ張ることは想定されていなかった。

マイナーチェンジはフェイスリフトを伴い2014年モデルとして発表され、フルモデルチェンジを数年後に予感させたが、2014年に立ち上がったフィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)はフルモデルチェンジを先延ばしにすることを幾度となく発表。細かなフェイスリフトを続けて現在に至っており、来年こそ、来年こそという期待は毎年のように外され、揺るぎないと言われてきた2021年モデルでのフルモデルチェンジも、現行のまま販売を継続することがアナウンスされた。

さらに、プラットフォームを共用するグランドワゴニアが先にお披露目されたこともあり、次期型となる5世代目グランドチェロキーは、2022年モデルとして発表されることがほぼ確定となったとも言える。

2017年にマイナーチェンジを実施したグランドチェローキー
2017年に再びマイナーチェンジを実施。伝統のセブンスロットグリルのデザインなどが変更されている。先進安全装備を充実、グレードごとに快適装備などが追加されている。

結果、10年を超えるライフサイクルとなった現行型グランドチェロキー。長きにわたって支持されてきたのは、ブランド性への信頼感もあるが、ラグジュアリィつまり十二分とも言える質感をメルセデス・ベンツ Mクラスとのプラットフォーム共用により手に入れたこと。さらに日本においては、ラレードであれば400万円を切るプライスを一時期とはいえ設定してリーズナブル感にまで訴えたこと、などが挙げられる。

過去、グランドチェロキーユーザーだった筆者からすると、それらの魅力は実にうらやましいものだらけだった。何よりもひとりのジープファンとして、Mクラスとの共用を強いられた(と勝手に思っている)ことは、旧態依然にこだわり、そこから脱却できずにいたジープだけでは成し得なかった英断に繋がり、そして、ジープブランドの可能性を大きく広げたものである、とプラスに捉えている。

ジープ史上最速が謳われるトラックホーク
ジープ史上最速が謳われるトラックホーク。710pa/868Nmの6.2リッターV8スーパーチャージャーを搭載、専用デザインの20インチホイールを装着する。価格は1356万円。
トラックホーク

さて、次期型が日本に導入されるまであと少し時間が掛かるが、果たして、現行型は買いなのか、という疑問が残る。実際、その乗り味は、ステアリングフィールにしても、トラクションコントロールといったシャシー制御にしても、10年分とはいかなくても、世代の古さを感じさせてしまうもの。

しかし、先に述べたように熟成による完成度は高く、何よりも、グランドワゴニアコンセプトを見て誰しもが感じたように、次期型グランドチェロキーの販売価格は大幅に上昇することが予想される。そう考えると、新型がデビューしても、旧型となった現行型は値上がりはせずとも、しばらくは高値で安定する、つまり、言いすぎかもしれないが、ラングラーと似た状況が生まれるのではないか、そう捉えている。

文/吉田直志 写真/FCAジャパン 編集/iconic

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