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自分の奥底に湧き上がるものが“車”であるならば

そもそも、貴殿はポルシェ911という車を「買うべき」なのでしょうか?

……これについては「人それぞれなので、なんとも言えない」というのが正確な答えになります。

具体的な答えを出さないことに対して「逃げてんじゃねーよ!」という非難もあるかもしれませんが、これは逃げではありません。人生の諸問題というのはたいていの場合、「なんとも言えない」ものなのです。

だってそうですよ。例えば筆者の場合、洋服は決して嫌いではないですが、割とどうでもいいといえばどうでもいいので、「下着はユニクロ、上着はワークマン」ぐらいの感じで十分満足です。それ以上のお金や労力を、ファッションというものに投入する意義を感じていません。

しかし洋服が好きな人は、そうもいかないでしょう。ユニクロやワークマンばかりでは耐えられないはずです。耐えられない理由は、「ダサく見られるから」というのもあるでしょうが、他人の目うんぬん以前に「自分の美意識がそれを許さないから」というのが決定的な理由であるはずです。

つまり、何かの分野にお金や労力を投じるか否かの判断基準は、他人に尋ねても意味はないのです。

自分の奥底からこう、なんというかマグマのように湧き上がってくるサムシングがある分野に、人はお金と労力を投じるべきなのです。いや、「べきなのです」というよりも、そういったマグマに対して人は、誰かから何かを言われる前に、とっとと自身で行動を開始しているのでしょう。

そういった意味で、もしもあなたが「ポルシェ911」あるいは「車」という単語を聞き、そのシルエットをイメージしたときに特にマグマを感じないのであれば、わざわざ高いお金を出して中古のポルシェ911を買う必要はありません。筆者がワークマンでパウンテンパーカーを買うように、近隣のトヨタディーラーなどで新型ヤリスあたりを買えばいいのです。それで十分なのです。

しかしあなたがあなたの内面に、なにかしらグツグツと煮えたぎる車系のマグマを自覚なさっているのなら――万難を排してポルシェ911を買うべきでしょう。

筆者は洋服に詳しくないためファッションブランドにたとえることができないのですが、皆さんがよくご存じの「質も哲学もデザインも素晴らしいファッションブランド」というのが、たぶんあるのだと思います。いつか自分のものとして袖を通してみたい、素晴らしいブランド。

ポルシェというのは、それの車版です。そしてポルシェ911の中古車は、そういったブランドの衣服の古着と同じです。

もちろん“古着”ですから、下手に選ぶとドツボにハマりますが、ちゃんとお金を出してちゃんしたやつを選べば――新品にはさすがにかなわないとしても――素晴らしいコンディションの“古着”が買えます。

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