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83年のブランクを経て生産された1937年式の「新車」

アルヴィス・コンティニュエーション・シリーズとオリジナル
右側がコンティニュエーション、左側がオリジナル。外観上の違いはコンティニュエーションのホイールにブレーキディスクが見えることくらいだ。

今回は新旧の2台、つまりオリジナルの1937年式4.3リッター・バンデン・プラ・ツアラーと、2020年製の同モデルという2台を試乗できた。まだ少し小雨の落ちてくるピットロードに並んだ2台の外観上の違いは、2020年製はドラムでなくディスクブレーキを備えることぐらいで、まさしく83年の時を隔てた双子といえる佇まいだ。

アルヴィス・コンティニュエーション・シリーズ
アルヴィスが所有する1937年式のオリジナルモデルのパーツを3Dスキャンしてデータ化、それを元に当時と同じ工法で製作されるという。

とはいえ戦前は自動車メーカーがパワートレインと車台とサスペンション一式の機能部分を作った上に、コーチビルダーやカロッツェリアがボディを載せるのが当たり前だった。「4.3リッター・バンデン・プラ・ツアラー」は車名というより、「4.3リッターエンジン載せにバンデン・プラが誂えたツアラー(・ボディ)」のことで、もはやバンデン・プラというコーチビルダーが存在しない今、2020年製のボディは1937年式のそれを3Dスキャンからパネル一枚一枚をおこして作られている。

組付けや仕上げの技術は今の方が高い分、精度や品質感では2020年製の方が優るほど。それこそが新車の放つ輝きでもある。他方で1937年式には、受けて立つような、年季を経た静かなオーラがある。いずれ甲乙つけがたい新旧2台だが、まずは1937年式でコースインした。

キースイッチで通電させてからイグニッションボタンでエンジンに火を入れる手順は、旧いクルマの定石通り。むしろ当初、面食らったのはZF製4速マニュアル・トランスミッションの重い感触と操作感だ。Hパターンの左上にある1速のゲートを間違えると、さらに一列左にあるリバースに入ってしまうので、そこだけは慎重に手元のレバーで探り当てる必要がある。

とはいえフルシンクロなので2速から上はスムーズそのもの。固かった感触も、ゲート入口にレバーを当て、一呼吸おいてから力強く引き込むまたは押し込むと、比類ない剛性感でもってエンゲージしてくれる。

シフトダウン時も同様だが、ダブルクラッチを踏むと想像以上に滑らかに吸い込まれていく。現代的なスポーツカーのショートストロークぶりとは縁遠いが、大きく丁寧で確実な操作を要求する、そういうスポーティさなのだ。

直6の4.3リッターエンジンは2000~3000rpmにかけては謡うように鷹揚なトルクを、3500rpmから上ではさらにパンチが効いて、野太く鋭い咆哮を奏でる。ウォーム&ローラー式ステアリングの中立付近の緩さこそ時代がかっているが、剛性感たっぷりのシャシーとしなるような乗り心地、そしてトルクフルなエンジンの仕事ぶりは、なるほど確かに戦前のスーパースポーツ特有の優雅さを感じさせる。

この優雅さが2020年製にどのように受け継がれているが、自ずとそこが比較の焦点と思えてきた。

<p>日本1号車となるコンティニュエーション・シリーズの4.3リッター・バンデン・プラ・ツアラー。アルヴィスとして3台目となる。ボディサイズは全長4900×全幅1700×全高1360mm、ホイールベース3135mm。</p>

日本1号車となるコンティニュエーション・シリーズの4.3リッター・バンデン・プラ・ツアラー。アルヴィスとして3台目となる。ボディサイズは全長4900×全幅1700×全高1360mm、ホイールベース3135mm。

<p>ボディサイズだけでなく、車両重量(1620kg)までオリジナル同様。ボディで異なる点は最低地上高が+10mm(140mm)、トレッド(前)が+20mm(1450mm)のみ。</p>

ボディサイズだけでなく、車両重量(1620kg)までオリジナル同様。ボディで異なる点は最低地上高が+10mm(140mm)、トレッド(前)が+20mm(1450mm)のみ。

<p>インテリアはオリジナルより“ラグジュアリー”な仕立てに。クルミ材のパネルで仕上げたインパネには、運転席前にタコメーター、助手席前にスピードメーターが備わる。日本仕様にはエアコンを採用。</p>

インテリアはオリジナルより“ラグジュアリー”な仕立てに。クルミ材のパネルで仕上げたインパネには、運転席前にタコメーター、助手席前にスピードメーターが備わる。日本仕様にはエアコンを採用。

<p>オリジナルモデルのステアリングにはスロットルと点火の調整用レバーが備わっている。</p>

オリジナルモデルのステアリングにはスロットルと点火の調整用レバーが備わっている。

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