「SUITS OF THE YEAR 2019」の受賞者でもある人気俳優・草刈正雄さんが初の書き下ろしエッセイ『ありがとう! 僕の役者人生を語ろう』を上梓した。資生堂CM「MG5」の鮮烈デビューから、知られざるどん底の時代、NHK大河ドラマ「真田丸」での再ブレイク、NHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」のエピソードなど、芸能生活50年のすべてを、ありのままに綴った貴重な1冊となった。
『ありがとう! 僕の役者人生を語ろう』
世界文化社、1430円(税込)
運命的な出会いで奇跡のデビュー
2020年は、草刈さんにとって節目の年だそうですね。
17歳でこの世界に入ってから、はや50年。半世紀が経ちました。
最初はモデルとしてデビューされたんですよね。
そうですね。でもモデルはあまり向いていなかったというか……九州の硬派な土地柄(現在の北九州市小倉)に生まれ育った僕には、「女性モデルと肩を組んで」とか「手をつなげ」と急に言われてもカメラマンの望むような動きが全くできなくて。よく怒鳴られましたね(笑)。
怒られている姿があまり想像できませんが。
この見てくれですから、みなさんどうも何でもスマートにこなすように思われるのかもしれませんね。でも、本当の僕はどうしようもなく不器用なんです。東京に出てきたものの「本当にやっていけるのか」不安で不安で仕方がなかった。
本の中で、「不思議なことに、ここぞということで必ず思いもかけない“出会い”に恵まれ、救いの手が差し伸べられてきたのです。」とありますが、その不安を取り除いてくれるような出会いは。
最初の運命的な出会いは、18歳の時に出演した資生堂さんの男性化粧品「MG5」のコマーシャルでしょうね。「団次郎さんの弟分に当たるモデルを探している」という話があって、すでにオーディションも進んでしまっていたのですが、当時、資生堂のコマーシャルのほとんどを手がけていた天才CMディレクターの杉山登志さんがたまたま会社におられて、カメラテストをしてくださった。その結果、僕を採用していただいたのです。このCM出演が決まったことは、次のステージへの大きな一歩になりました。
YouTubeでCMの動画を見ましたが、まさにイケメン、そして爽やかですね。さぞやキャーキャー言われたのでは。
「人気」というものを実感したのは全国の資生堂さんの販売会社で僕のサイン会を行ったときでしょうね。自分の予想よりもはるかに大勢の女性たちが集まってくださっていたのを思い出します。ともあれ、僕にとってはこのCMが全国放送だということが、とにかく嬉しかった。故郷の母に僕の活躍を見てもらって安心してもらえましたので。