ミッドシップならではの前後重量配分

通常であればグローブボックスとなる助手席前方にスロットがある。そこにカードキーをさしこんでからスターターボタンを押すとエンジンが始動する。ベース車より少々野太い音が聞こえてくる。正直にいうと最初に試乗したベース車では少しもの足りなく感じたエンジンのフィーリングやパワー感が改善されていた。高まる音につられてどんどんアクセルを踏みたい衝動にかられる。ステアリングに備わるSPORTボタンをおせば、ドライブモードを「ノーマル」、「スポーツ」、「トラック」の3つから選択できる。スポーツモードにすればよりレスポンスが高まり、トラックモードではESC(横滑り防止装置)をオフにすることも可能になる。
シャシースポールの効果もあって、ベース車に比べてロール量が少なくベース車とくらべると安定感が増している。ベース車のほうが軽快感があっていいという声もあるようだが、実際の車両重量はベースもこのSもまったく同じ1110kgというから驚く。前後重量配分は前軸重が480kg、後軸重が630kgで、43:57とまさにミッドシップカーならではのバランスで、ここにも走ることへの飽くなきこだわりが見てとれる。
ちなみに同じミッドシップのポルシェケイマンSの車両重量は1460kgで最高出力は350ps。FRのスープラ(RZ)は387psもあるけれど、車重は1530kgにもなる。対してこのA110Sは300psに満たないけれどわずか1110kg。乗って楽しいし、燃費だってよくなる。スポーツカーにとって軽さは命なのだと、教えてくれる。
文/藤野太一 写真/柳田由人 編集/iconic