自動運転の「レベル」とは?
自動運転は現在、「レベル5」まで段階的に定義づけされており、大別すればレベル1~2は運転支援(責任の所在はドライバー)で、レベル3~5は事故の責任をドライバーではなく、システム(クルマ)が担う本来的な自動運転とされる。
新型アウディA8は世界で初めて「レベル3」(特定の場所ですべての操作が自動化、緊急時はドライバーが操作を担う)機能を備えた市販車として発表されたが、現実には法律やインフラの整備が追いついておらず、日本をはじめ欧州などでも実用化には至っていない。
そうした中、BMWは7シリーズに「レベル4」(特定の場所ですべての操作を完全に自動化)の自動運転技術を搭載したテスト車両を日本に持ち込み、そのイベントでデモ走行を披露した。7シリーズをベースとしたテスト車両の前後バンパーにはレーダーやLiDARが、また左右Aピラーやフェンダーなどにもカメラが仕込まれていた。ルーフには2基のGPSアンテナが載っており、トランク内部はデータロガーなどの機器によって埋め尽くされていた。

実用化はもう間近?
BMWは今、世界中で70 台以上のこのようなテスト車両を使って自動運転に向けたテストを行っている。路上テストを含めて、人工知能 (AI)による機械学習をさらに改善するためのデータを収集し、「レベル2」から「レベル5」までの実験を繰り返しているという。BMWデベロップメント・ジャパン本部長のルッツ・ロートハルト氏は、「BMWでは現在1800人ものスタッフが自動運転の開発に従事しており、そして2021年にはレベル3の自動運転車の量産を開始する計画を立てている」と話していた。
デモ走行は、駐車場に停まっているテスト車両を、スマートフォンを操作して呼び出すことから始まる。目の前に到着し、確認のためもうスマートフォンを操作するとドアが解錠され、人が乗り込むことが可能になる。目的地はアプリによって車両に送信し、シートベルトが装着されたことを確認してクルマは自動的に走り出す。デモでは特設コースに置かれた車両の合間を縫うように自動で走行し、目の前に飛び出してきた車両に反応して一時停止ののち、スタート地点にもどり自動で元の位置に駐車して終了というものだ。

今年7月にはBMWグループとダイムラーAGが、自動運転に関して共同開発を開始すると発表。「レベル4」の高速道路における自動運転、および自動駐車システムに的を絞ったもので、2024年には市販車両に導入を計画している。
自動運転には法整備はもちろんテスト車両をみてもわかるように数々の車載機器が必要で、また道路側にも通信インフラが必要になる。誰がそのコストを負担するのか、また国や地域によっても事情はそれぞれ大きく異なるだろう。もしかすると世界共通の答えはないのかもしれない。まずは高速道路だけ、ある特定エリア内だけといった特区にて、物流トラックなど商用車ベースに開発を進めたほうが社会貢献度は高いだろう。
いずれにせよ“駆けぬける歓び”を標榜するBMWが、メルセデスと手を組んでまで自動運転の開発に注力しているという事実はなんとも興味深い。
文/藤野太一 写真/BMWジャパン 編集/iconic