先代プリウスと同じ車幅
セダンとワゴンのツーリングは、スポーツと同様の「キーンルック」スタイルを採用し、ほとんど同じように見える。けれども、前から見れば少し、様子の違うことに気づかれるはずだ。台形の大きなグリルの左右が、スポーツは広がっているけれども、セダンとツーリングは少しスリムに見える。
それもそのはず、セダン&ツーリングは全幅1790mmのスポーツをベースとしつつ、横幅を左右合わせて45mm狭めて1745mmとしたからだ。もちろんそれでも、ついにカローラも全て3ナンバーになってしまったか、と、サイズコンシャスな方はがっかりされることだろう。従来と同様に5ナンバー枠に収める検討もなされたはずだが、やはり今回のカローラの開発目標は、スポーツで高く評価したように、走りの基本ポテンシャルを高めることにあったため、5ナンバー枠では限界があったのだと思う。それでも開発陣は日本のユーザーの利便性を考え、日本仕様専用に何とか1745mmという妥協点を見出した。これは先代プリウスの全幅と同じで、あの爆発的な販売台数を思い出せば、多くのユーザーにとって納得できる横幅だろう。
乗り味は上々
いずれにしても、随分とスタイリッシュになった。Aピラーは寝かされ、それに合わせてセダンのリアセクションはなだらかにまとめられている。そのぶん、後席の居住性やリア視界などに不便を感じる場合もあるが、そこに開発陣の思い、たとえば実用一点張りのクルマから一旦抜け出すという挑戦、を逆に感じた。年齢層の若返りなども急務なはずだ。
相変わらずスポーツの乗り味は素晴らしい。18インチタイヤをきっちり履きこなす。一年前に比べて、よりきれいに走る。特にハンドルの切りはじめから旋回の姿勢保持、そして再び直進状態へと戻るまでの一連のステアリング操作に雑味がなく、気持ちいいのが特徴だ。前輪のみならず後輪もしっかりと路面を捉えているという印象があって、安心してドライブできる。
セダンやツーリングも悪くなかった。否、従来のこのクラスの国産車にはない乗り味をみせた。街中から高速域まで常にフラットなライドフィールをみせる。ちょっとした欧州車のようで、特にドライバーの目線がぶれないことが嬉しい。
改善すべきポイントは?
不満がないわけじゃない。1.8ハイブリッドはそれなりにパワフルでいいのだけれども、街中で多少、ばたつく。ツーリングよりもセダンのほうにその傾向があった。重量やボディ形状の差かも知れない。
「カローラのような一般的なクルマに、フラットライド性や旋回性のよさ、微小領域における操作フィールを求めてどうする? そんなこと気にしない人が乗るクルマじゃないか」 そう思われる向きも多いだろう。実際、その通りで、カローラのユーザーがそれを強く求めて買っているとは思えない。乗ってみればその良さに気づくと思うが、それも比較して初めて分かるレベルである。要するに、普段乗りに大きく影響することのない、細かな話なのだ。
実際、以前のカローラや日本の実用車はそういう考えに立って開発されてきた。速度域やドライバビリティへの要求の高いヨーロッパ仕様と日本仕様はまるで違うということで、「こんなもんでいいだろう」的なセットアップがされていた。今でもそういうブランドやモデルは存在する。手を抜いていた、とまでは言わないが、客のレベルを低く見ていた感は否めない。
確かにカローラは、運転に対して常に前向きで熱心、積極的な人に売るクルマではない。けれども、だからこそ“マトモに動く”必要があるのだと思う。少なくとも欧州車のベーシックカーはそういう考えで、必要以上に念入りなセットアップがされていた。
国産コンパクトカーでも、ようやく、トヨタがその領域にアシを踏み入れた。そういう意味でも、新型カローラ三兄弟は記念すべきモデルであると思う。
文/西川 淳 写真/トヨタ自動車 編集/iconic