次の「驚きの事実」とは、例えば「世の中の93%のお金はオンライン上に存在する」といった意外性のある話です。これはFS-ISACというアメリカの機関が調査したデータなのですが、「現金って、世の中のお金の7%でしかないんだ!」というちょっとした驚きを提供してくれます。こういうデータは、「他の人にも教えたくなる」という気持ちにさせてくれるので、非常に効果的です。
そうはいっても、この手のデータは収集するのがなかなか大変ですし、情報ソースを確かめておかないと、突っ込まれたときに困るので、理論武装をしておく必要もあります。そして、データばかりを集めてプレゼンをしても、最終的に「で、何を言いたかったんだ?」という状態になってしまうリスクもあります。
では、プレゼンテーションで笑いを取る「面白い話」は、どんな位置づけになるのでしょうか。この「面白い話」だけでプレゼンテーション全体を構成しても意味がありません。ビジネスの場や学校などでのプレゼンはお笑いライブとは違いますし、笑ってもらうことが目的でもないでしょう。
プレゼンテーションでは一撃必殺のギャグを考えるよりも、行動を促すような説得力のあるストーリーを考える方がはるかに大事なのは言うまでもありません。では、「笑い」はどんな位置づけになるのでしょうか。
私は「プレゼン中の息継ぎ」と思っています。プレゼンテーションがずっと続き、提供される情報の量が多くなってくると、聴衆はどうしても集中力を維持するのが難しくなってきます。集中する能力は、個人差がとても大きいものです。プレゼンテーションは、できる限り「集中力が続かない人」に合わせて内容を作ることが、結果的に全体の満足度を上げるコツになります。
緊張をほぐすために
効果てきめんな「笑い」の入れ方
ちょっと緊張をほぐすために、笑いは効果てきめんです。もちろん、ストーリーと全く違う話を入れてしまうと聞いている側の頭が混乱してしまうので、流れの中で織り交ぜるのが効果的です。
例えば、私が最近一番多くプレゼンしているテーマでもある「働き方改革」の話で考えてみましょう。私は「リモートワークの必然性」を強調するために、「この中で、満員電車に乗るのが大好き、モチベーションの源になるって方はいらっしゃいますか?」とオーディエンスに問いかけたりします。
まず、満員電車が好きな人はほとんどいないので、この問いはかなり不自然です。こういった「ちょっとズレた問いかけ」は、軽い笑いを取ることができます。
満員電車に乗って出勤すると、たいていの人は疲労やストレスを感じています。「満員電車に乗ると疲れますよね」「夏場に知らない人と密着する状態は大きなストレスになりますよね」と説明するのは、ごく当たり前の表現です。これを「満員電車が好きな人はいますか?」と少しひねることによって、若干の皮肉がこもったユーモアに変換できます。
話の流れは全く変わらず、クスッと笑う程度の話を差し込むことで緊張感を和らげて、その後に続くプレゼンに再度集中する準備をしてもらうことができます。