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笑いが取れなかったとき
「笑いのカツアゲ」をしていないか

もちろん、面白い話を入れたつもりでも、まったく反応がない場合もあります。上記の問いかけはよくしていますが、会場が無反応なケースも1割程度あります。

そこで、プレゼンをする側の心構えとして大事なのは、「笑ってもらう」ことではなく「緊張をほぐす瞬間を作る」ことが目的だと理解しておくことです。

笑いが起きなくても、笑うまで繰り返しあの手この手で冗談を言う必要はありません。ましてや、「今のは笑うところです」なんて言うのは愚の骨頂です。これを「笑いのカツアゲ」と教えてくださった方がいます。「株式会社俺」の社長である中北朋宏さんが、その人です。

中北さんはもともと芸人を目指していて、実際に芸能事務所に入って活動されていました。お笑い芸人としては残念ながら成功できませんでしたが、その後、持ち前のユーモアセンスを生かしてセールスで大活躍。今では独立して「笑い」をテーマに企業研修などを行っています。

中北さん曰く、「笑いにはメカニズムがある」とのことで、そのメカニズムを知ることによって相手を笑わせる、それも無理することなく笑いを誘って場の雰囲気を良くできるそうです。

笑いが起きるとその場の空気が和らいで、居心地が良くなります。人は誰かと共有している空間が快適であればあるほど、パフォーマンスを発揮できます。プレゼンテーションを聞いているときも、居心地が良ければ理解度が高くなったり共感しやすくなったりします。そのためにも、笑いはとても大事です。 とはいえ、やみくもに笑いを取ろうとするのは、プレゼンではあまりにもリスクの高い行動です。テレビで見た芸人さんのまねを慣れない人がやろうものなら、とんでもない大事故につながりかねません。

私も何度もそういう現場に居合わせて、極めてやりきれない気持ちになったことがあります。こうなると、居心地の良さは吹っ飛んでしまい、聴衆は「早く終わらないかな…」という気持ちになってしまいます。

「緊張」と「緩和」によって
効果的な笑いは生まれる

詳しくは中北さんの著書『「ウケる」は最強のビジネススキルである。』をご覧になることをおすすめしますが、少しだけご紹介すると、「笑いは『緊張』と『緩和』によって生まれる」というのが中北さんが教えるコツです。一定のまじめな時間を作った後で、ふっと緩めるような話を入れると、思わず笑いが生まれるそうです。まさに、プレゼンテーションの「息継ぎ」とつながるものがありますね。緩和をしてから緊張に徐々に戻していけば、聞いている側が疲れすぎずにすみますね。

また、笑いには「自己開示」も大事だそうです。芸人さんたちは、自分たちの容姿や育った背景などを「ネタ」にすることがあります。場合によっては恥ずかしいことも、すべて笑いの源泉になることを知っているからです。このようなメカニズムを理解すれば、再現可能な笑いのストーリーを作ることができます。

プレゼンテーションは準備8割、話し方によって得られる効果はせいぜい2割です。その場で妙におどけてみたり、くだけた話し方をしてみたりしても、大した効果を得ることはできないどころか、聞いている人たちが白けてしまって場が凍りついてしまうかもしれません。

ここでちょっと笑ってもらおうかな、と思うのであれば「ずっとまじめな話をした後に自分の失敗談を入れて『緩和』の瞬間を作ろう」など話の戦略を立てておきましょう。アドリブで笑いを取るのは、プロでも非常に難度の高い技ですし、それはあくまで軸となる芸があって初めて成功するものです。

笑いのメカニズムを研究して、ご自身のプレゼンテーションをより華のあるものに仕上げてください。

澤 円(さわ・まどか)プレゼンテーション・アドバイザー、圓窓 代表

立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。著書に「あたりまえを疑え。 自己実現できる働き方のヒント」「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術」がある。

ダイヤモンド・オンライン

[ダイヤモンド・オンラインの記事を再構成]
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