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高校卒業後は東京の専門学校へ

お客が減少しているのを知っているだけに、仕立屋になることは叶わないだろうと思っていた佐藤さんは、高校を卒業すると東京の専門学校へ通いはじめた。学校は日仏ファッションアカデミー。

「フランスで修業を積んだ五十嵐九十九(いがらし つくも)先生の学校で、私塾のような雰囲気でした。在学中に銀座のホテルでアルバイトをしてお金を貯めながら、2年通いました」。

つぎに佐藤さんは貯金を手にし、フランスへ渡ることを決意。五十嵐先生の紹介で向かった先はパリのアカデミー インターナショナル クープ ド パリ(AICP)だ。校名にあるクープとはカッティングのこと。型紙製作、オーダーメイドの仕立てに加え、パタンナーやモデリスト養成といった性格を持ち合わせている学校で日本人生徒は自分を入れて2人だけだった。

パリのAICPの様子
当時のパリのAICPの様子を収めた一枚

仕立て職人への思いが増したパリ時代

校長先生はジャン・ポール・ボークレー氏。この学校は日本の専門学校とは違い、かなり実践的な環境で教育が行われていた。3か月のコースを4課程ほど受講するのが基本で、授業の代わりに、プロのアトリエを手伝えば授業を受けた扱いにしてもらえることもあったそうだ。

「僕は優遇されていましたね。同じビルにメンズカジュアルを主に手掛けるアトリエがあり、興味のない授業の代わりに、そちらで過ごすことも多かったんですよ。アトリエでは見習い扱いで、ずっと既製服の型紙の仕事をしていました」 このときも佐藤さんは周囲の人たちから「オーダーメイドは時代遅れ。既製服のパタンナーになったほうがいい」と言われてしまう。

しかし、逆境にめげる佐藤さんではない。五十嵐氏のもとで学び、優れた仕立てを見ていた佐藤さんは、オーダーでいいものを作りたい。流行で毎シーズン、変わるものではなく一つのものをこだわって作る仕事がしたいと、オーダーメイドへの気持ちが却って強まっていく。

現在、サロンには膨大な量の生地が揃えられている。

現在、サロンには膨大な量の生地が揃えられている。

サロンに整理整頓された生地。

サロンに整理整頓された生地。

高級感のあるサロン内。チェアはパリの劇場のシートとして使われていたアンティークだ。

高級感のあるサロン内。チェアはパリの劇場のシートとして使われていたアンティークだ。

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