これまで、MEN’S EXでは、高度な腕前を持つ職人の方々を紹介してきた。彼らの持つ特別な技術は、これまでにも多くの場で分析されてきたが、実はテクニック以上に面白いのはそれぞれの人生だ。名人芸を生み出すきっかけは個性的な経歴があってこそ。この連載では、そんな名職人たちのユニークな人生を取材し、超絶技巧が生まれた背景を探ってみたい。
ユニオンワークス代表/中川一康さん 【後編】

Profile
中川一康(なかがわひろやす)さん
大学卒業後、ファッションの道を志し、専門学校に通う。短期間、アパレル業界で働いたのちに靴修理の道へ。靴修理の専門企業に就職し、独立後、29歳でユニオンワークスを設立する。最初は自宅兼工房でスタートし、渋谷、青山、銀座、新宿と店舗をオープン、成功を収める。現在は修理のみならず、自身の好きな製品を取りそろえてオンラインや店舗での販売も行なう。
渋谷、青山と順調に店舗をオープン
インターネットの普及していない時代にもかかわらず、ユニオンワークスの仕事は評判となり、注文は増える一方。寝る暇も惜しんで働き、中川さんは96年には自宅兼工房とは別に渋谷に最初の店舗をオープンする。次いで97年には従業員を雇用し、2000年には神奈川県川崎市に工場を構えて、店舗と工場で接客と修理の分業体制を確立した。
順風満帆の中川さんの次なる転機は2004年の青山店オープンだ。ついに夢の路面店をオープンし、しかも住所はファッションのメッカである渋谷区神宮前。