ラグジュアリーこそ、本質主義でまといたい
世界に冠たるラグジュアリーブランド。そのまばゆいばかりの輝きに、私たちはいつも魅せられてきた。しかし、絢爛たる煌めきの根源にあるものに想いを致すことはあるだろうか。 そこには、メゾンが大切に守り抜いてきた技がある。果てしない素材への探究心がある。着る者の魂に響く哲学がある。クワイエットラグジュアリー、ミニマルラグジュアリーといった言葉がモードの世界を席巻して数年が経つ。それはまさに、世界がラグジュアリーの本質に注目していることの証明ではないだろうか。今こそ、新しい視点でラグジュアリーの価値を考えてみたい。
Berluti(ベルルッティ)

華麗なり、パリの文化遺産
ベルルッティのコレクションには、燦然たるパリの文化が宿っている。まだ靴だけを作っていた時代から、アンディ・ウォーホルやマルチェロ・マストロヤンニ、ジャン・コクトーといった各国のアーティストを顧客リストに連ねてきたのも、華の都パリの文化を体現する芸術性が彼らを魅了したからだろう。卓越した技だけではラグジュアリーを体現できないことを、ベルルッティは理解していたのだ。創業130周年を迎えたメゾンが今季中核に据えるのは、かの名品フォレスティエール。ル・コルビュジエの依頼によって考案され、フランスの伝統的なハンティングウェアに想を得たという物語を宿すアイコニックなジャケットは、パリの文化遺産と称したい一着だ。特筆すべきは、それを極上のカシミアで仕立てていること。カントリー由来のフォレスティエールに、ラグジュアリーの煌めきを与えたのだ。これぞ、伝統の継承と進化の体現。“ああ華麗なり!”と心が喝采に沸くはずだ。
[MEN’S EX Autumn 2025の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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