トリッカーズの”洗礼”に最初は驚いた
靴業界関係者向けの専門誌『フットウェアプレス』からエディターとしてのキャリアをスタートし、本格靴に関する著書も上梓してきた竹川氏。現在所有する靴は約100足にものぼるという。そんな氏がトリッカーズと出会ったのは約15年前のことだ。

1970年生まれ。著書に『紳士 靴を選ぶ』(光文社新書刊)など。現在、ルポルタージュを執筆中。
「靴の業界誌でいろいろな靴を見続けていく中に当然トリッカーズも入っていたので、どんな靴かはわかっているつもりだったんですが、実際に履いてみると驚きましたね。ソールがとにかく硬い。足に血豆ができるほどでした。そんな”洗礼”を受けつつやっばりこの雰囲気が魅力的で、隙をつくように恐る恐る、少しずつ履いていました。そうして何年か経ったとき、ふと、一日トリッカーズを履いた後もいたって普通に過ごしている自分に気づいたんです。”そっいえば、最初あんなに硬くて痛かったのに、今は全然平気だな”と。新品のときが嘘のように、分厚いソールもアッバーも柔らかくなって、自分の足にびったりと馴染んでいたんです。それからはヘビロテで活躍する一足になりましたね」
素朴で強い。男らしさを象徴する一足です
靴を週ぶときに重要視するのは、華やかさよりも男らしさだと語る竹川氏。氏にとって、トリッカーズはルックスの面でも非常に魅力的なブランドだそうだ。
「どんな険しい道でもへこたれない強さがいいですね。これ以上に男らしい靴はまずないでしょう。昔聞いた話ですが、トリッカーズは九州で大変よく売れるんだそうです。なんだか、それも分かる気がしますね。”九州男児”って言葉にピッタりな靴ですから。素朴なデザインの中に肉食系な強さもある。そんなところが、長く履き続けたくなる魅力だと思います」

トリッカーズの象徴的カントリーブーツ。アッパー、ソールとも非常に堅牢で、最初は硬い履き心地だが、竹川氏愛用のこちらは15年を経て柔らかく馴染んでいる。履きジワの入り方も大変味わい深い。
映画の舞台になったトリッカーズの工場

トリッカーズファンにとってはお馴染みの映画が、『キンキーブーツ』というイギリスの作品。ノーサンプトンで靴工場を営むチャーリー・プライスが、”女性用の紳士靴”の製作に挑み、社の危機的状況を打破すべく奔走する……というストーリーの本作。その撮影場所として、トリッカーズのファクトリーが使われたのは有名な話だ。各シーンで出てくるラストやミシン、吊り込み機械などは、実際にトリッカーズの靴作りに使用されている。普段はなかなか見ることができない、ノーサンプトンのファクトリーの様子を垣間見られる映像として、靴好きならばチェックしておきたい一本だ。
