クロケット&ジョーンズの 歴史を知る

ノーサンプトンにあるファクトリー。外観からも、同社の規模が分かる。

クロケット&ジョーンズ(以下C&J)は1879年、ジェームズ・クロケットとその義兄弟であるチャールズ・ジョーンズの2人によって創設された。創業地は靴産業の聖地・英国ノーサンプトン。当時かの地では、手製靴を製作していた職人たちが寄り集まって機械を導入し、靴製造のための小さな”工場”を営み始めていた。C&J社も、そんな黎明期の靴工場の一つとして産声を上げたのである。

果てしなく地道な"製造者"としての歴史こそ"旬"を体現するC&Jの基盤だ

上:ラストを基にパターンを起こしている部屋。採光の為の窓が目を引く。
左下:創業者ジェームズ・クロケット。

右下:同チャールズ・ジョーンズ。

当初20名ほどの規模であった同社だったが、その品質が評判を呼び、会社は瞬く間に成長。1890年代にはグッドイヤー製法のための機械を導入し、その後新しい工場も設立するなどしてさらに生産力を拡充していった。1924年にはヨーク公(ジョージ6世)も同社を視察に訪れるなど、英国靴産業において次第に重要な地位を占めるようになっていく。’27年には1000人を超える従業員を擁し、週に1万5000足という生産記録を樹立。第二次大戦期間中には、トータルで100万足もの靴を軍のために製造したという。

こうして大成長を遂げた”靴工場”が、”靴ブランド”としての歴史をスタートしたのは、’77年、現社長であるジョナサン・ジョーンズの就任に端を発する。ジョナサンは自社をリブランディングし、高品質な靴作りに焦点を当てた経営を行った。結果、それまでOEM主体の黒子であった同社が「クロケット&ジョーンズ」というブランドとして認知されていったのである。

革の検品風景。OEM主力の時代から、品質には相当なこだわりをもっていた。

靴の検品を行っている場面。多数の従業員がC&J社の規模の大きさを窺わせる。

現在の工場風景。これはレザーを裁断しているところで、現在も手作業によるカッティングが行われている。生産性偏重に陥らず、きっちりと守るべきところは守っているのがC&Jの良さだ。

現在は様々な超一流ブランドの靴製造を請け負う一方、各セレクトショップの別注靴作りにも盛んに取り組むC&J。その基盤になっているのは、どんなリクエストにも柔軟に応える対応力だ。時代に即応したラインナップには、靴のトレンドがそのまま現われているといっても過言ではない。そしてその対応力を培ったのは、過去OEMで行った膨大な靴製造の経験にほかならない。”旬”を体現する華やかなC&Jの背景には、どこよりも地道な製造者としての歴史が存在しているのだ。

ブランドの躍進を支えるディミトリ・ゴメス

1998年、パリにショップをオープンしたのに伴ってC&Jに参画したのが、腕利きの靴職人ディミトリ・ゴメス。氏が成した最も大きな功績のひとつは、現在の主要ラスト「337」を生んだことであろう。その他の新木型も多く考案し、ブランドの躍進を支えた人物なのである。

現在もパリ店でシュル・ムジュル(ビスポーク)職人として、その腕を揮っている。パリのビスポークは、一般的なC&Jの靴とはかなり異なった表情で、フランス的美学が宿った色気たっぷりの雰囲気が魅力だ。

2024

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