時代に即した柔軟性と自身のスタイルを兼備
ドレスクロージング一筋で経験を積んできた中村氏にとって、クロケット&ジョーンズとは相当長い付き合いだ。個人的にも写真の一足のほか、何足も愛用しているそう。
「あるとき、スーツに合わせるスエード靴を買おうと思い立ったのですが、形・素材・デザインなど、条件に合うものを探すのは意外と難しかったんです。検討の末入手したのがこちらですが、クセがなく普遍的で、全体のバランスが優れているのが決め手でしたね。それから、履き心地や耐久性も良好。この『ウェルベック2』はハンドグレードラインに属しますが、アッパー・底材・ソールが柔らかく、足馴染みが良い。一方で耐久性も高く、手入れさえすればガンガン履いても長持ちします。靴に気を使ってソロソロ歩く、なんて無粋な真似をする必要は皆無で、しっかりと生活に寄り添ってくれるのが魅力ですね」
C&Jは店頭でも昔から継続展開する定番。中村氏も毎回展示会を訪ね、新作をチェックしている。
「もともとOEMで超一流ブランドを支えていただけあって、要望への対応力は抜群。どんな注文にも柔軟に応える懐の深さには感心します。展示会でも毎回バリエが豊富で、しかもハズレが少ない。しかし、柔軟だからといって芯がないというわけではなく、しっかりスタイルがあって、ものづくりに対するこだわりも一貫しています。ですから、別注の際にはできるだけクロケット本来のスタイルを損なわずに芯を通しつつ、時代性に合わせたリクエストをするようにしています。そして、むこうもそれにしっかり対応して、いいものを上げてくれる。現社長のジョナサンも、フレキシブルだけれどしっかり芯を持った人ですから、これからもC&Jの姿勢は変わらないでしょう。伝統に根ざした確固たる基盤と、時代に即応できる対応力を持った、非常に稀有なブランドだと思います」