観光メニューをなぞり、体験を詰め込む時代から、ひとつの目的に贅沢な時間を費やす“一点集中型”の旅へ。ラグジュアリーな旅のあり方は、今まさに変わろうとしている。
記憶にのこる【体験】
バンヤンツリー・東山 京都
[京都・東山]
その土地で味わうからこそ心に刻まれる“体験”がある。京都は東山、霊験あらたかな霊山の地。この能舞台だからこそ立ち現れる幽玄の美。
自然と溶け合う能舞台を前に五感で味わう幽玄の美
多くの観光客で賑わう京都市街の喧騒から少し離れると、静寂に包まれた異世界が広がる。清水寺と高台寺の間に位置する霊山(りょうざん)。その自然に抱かれるように佇むのが「バンヤンツリー・東山 京都」だ。
昨年、半世紀以上親しまれた「ホテルりょうぜん」跡地に誕生。清水寺や高台寺、八坂の塔にも近く、東山の高台から京都市街を一望できる立地だ。天然木を用いた正門を抜けると、大胆に張り出した大庇が訪れる者を迎える。白木を幾重にも交差させた意匠は隈 研吾氏の設計で、黒を基調に木材を生かした外観はモダンなお屋敷を思わせる。
ここは世界有数のリゾート&ホテルブランドが日本の古都で表現した、新しいコンセプトの温泉旅館。建築家・隈 研吾氏が手掛けたコンテンポラリーな外観デザインも際立つが、宿の真髄は“幽玄”を体現した能舞台にある。
敷地内に設けられた、京都のホテルで唯一の能舞台も、隈氏ならではの設計だ。屋根や壁を排し、水盤に浮かぶように据えられた舞台は竹林や空と溶け合い、自然と一体化している。舞台そのものが水に浮かんでいるかのように見える視覚効果を狙っており、観る者は非日常の世界へと誘われる。
ここで表現される“幽玄”とは、世阿弥が『風姿花伝』で説いた目に見えぬ美。とりわけ隈氏が着目したという「夢幻能」では、霊的な存在を主人公に現世と来世が交錯する世界観が描かれる。
霊山は古来より“現世と来世を隔てる結界”のような場所とされてきた。だからこそ、この舞台で観る能は特別だ。それは、単なる伝統芸能鑑賞の域を超え、自然と人間の境界に立ち現れる“幽玄の美”を五感で味わう稀有な体験となる。
幽玄なる能舞台で伝統の真髄に触れる
京都のホテルで唯一の能舞台
隈研吾氏が設計した能舞台。屋根も壁も持たず、自然と溶け合うように佇む。古来より“現世と来世を隔てる結界”のような場所とされる霊山の地にふさわしい存在だ。「鎮魂の芸術」と呼ばれる能を五感で味わう、新しいカタチの体験となる。※不定期開催のためホームページで要確認。
天然温泉を部屋で味わうという至福
全52室を擁する客室は、橋本夕紀夫デザインスタジオが“秘すれば花”をテーマに設計。仕切りを減らした開放的な空間は、金箔のヘッドボードや白木の温もりが調和し、風雅な世界観を演出している。
「バンヤンツリー」といえば高い技術力のスパも魅力で、全室にヒバのバスタブを備え、天然温泉やスチームバスに全身マッサージを組み合わせた独自メニューが受けられる。
バンヤンツリー・東山 京都
京都府京都市東山区清閑寺霊山町7
TEL/075-531-0500
料金/1室2名利用で1泊夕朝食付き1室20万円~(税サービス料込)※別途京都市宿泊税1名1000円
滞在時間/IN15時、OUT12時
[MEN’S EX Autumn 2025の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
※表示価格は税込み





