【靴市場に精通する識者が考察】“端正” の時代から “快適” の時代へ

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未来予想(2)Shoes
革靴はどこへ向かうのか?

服装の変化に伴い、かつてスーツの相棒であった革靴市場も大きな変革期を迎えている。靴業界に精通する識者が市場の傾向を踏まえ、これからの靴のあり方と楽しみ方について考察する。

靴市場に精通する識者が考察

鏡 陽介さん、横瀬秀明さん

[左]伊勢丹新宿メンズ館 紳士靴バイヤー 鏡 陽介さん
バッグやテーラードクロージングのバイヤーを歴任したのち、2023年から紳士靴バイヤーを担当。靴と服どちらにも深い造詣を持つ。

[右]GMT代表 横瀬秀明さん
パラブーツ、トリッカーズの日本紹介に尽力。国内外の靴事情に精通し、国内のトレンドを熟知し。市場を牽引する靴業界の第一人者。

“端正” の時代から “快適” の時代へ

横瀬 かつて革靴は、端正の象徴でした。ウエストを絞った木型で輪郭も鋭く見せる革靴は“男の美学”を語るものでしたが、今はその価値観が大きく変わった気がします。

鏡 その変化は私も強く感じています。以前はドレス靴が日常の主役でした。週5日以上スーツを着るのが当たり前でしたから。

横瀬 今は見た目で選ぶというよりも、履き心地や滑りにくさ、疲れにくさを重視する方が増えましたね。特にコロナ以降、その傾向は顕著です。

鏡 革靴をお求めになるお客様は三つに分かれると考えています。TPOに合わせて革靴を選ぶ方、ファッションとして楽しむ方、そして物としての革靴に魅了される方。

横瀬 その分類は面白いですね。

鏡 しかし、仕事服のカジュアル化が進むなかで、TPOを守るためのものとして革靴が選ばれる必然性が少なくなってきた。一方で、日常の中で履くものに対しては、履き心地の良さとか、歩いてて疲れないとか、そういったところを求める人たちが増えてきたのではないかと。

横瀬 “男の美学を体現する靴”から、“パフォーマンスを向上させる靴”へと価値の置き方が変わったと言えますね。

1960年代

革靴が欧米スタイルの象徴に
[背景]高度経済成長期/欧米ビジネススタイルを模倣
[流行靴]黒のストレートチップ、プレーントウが主流
[特徴]欧米映画から“靴は紳士の顔”という価値観に

【1970年代】

国産ブランドの人気上昇
[背景]国内製靴技術の成熟/百貨店文化が拡大
[流行靴]外羽根式、ローファーが人気に
[特徴]欧米職人のグッドイヤー製法が日本に浸透

【1980年代】

バブルと舶来ブーム
[背景]経済成長と海外ブランド志向
[流行靴]英国・米国ブランドが登場/タッセルローファー、チャッカブーツなどが人気に
[特徴]高級輸入靴がステイタス化

【1990年代】

本格靴ブーム
[背景]バブル崩壊で「本物志向」へ/雑誌や専門誌で靴特集が増加
[流行靴]英国・米国の本格が靴ブームに/コードバンシューズ、フルブローグなどが人気に
[特徴]靴磨き文化が広がり、海外ブランドをセレクトする靴専門店が台頭/「一生モノ」という価値観が定着/国外ブランドの生産国やファクトリーが雑誌にて紹介

【2000年代】

本格靴と軽快靴の二極化
[背景]カジュアルフライデーなどドレスコードの緩和/海外ブランド信仰がピークに/ 2002年に『最高級靴読本Vol.1』が発刊
[流行靴]イタリア靴やスペイン靴がブーム/マッケイ製法の靴、カラーシューズが人気に
[特徴]華やかなイタリア靴と、英国クラシック靴の二極化/製法などのスペック至上主義の価値観が登場/セレクトショップがファクトリーブランドを提案

【2010年代】

スマートカジュアルの浸透
[背景]リーマンショック後はコスパ重視に。クールビズの浸透
[流行靴]コスパに優れた靴、コンフォート革靴、スニーカーソールの機能性革靴、ドレススニーカー
[特徴]オン・オフ兼用シューズや、軽量・防水革靴の登場/コスパに優れた国産ブランドの再評価

【2020年代】

靴の価値観の多様化
[背景]ドレスコードの自由化が進行/コロナ禍以降はライフスタイルが多様化
[流行靴]スリッポンがさらに人気に/ラバーソールなど快適性に優れた靴が主流に
[特徴]ドレス需要がセレモニーなど、限定的に。



[MEN’S EX Autumn 2025の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)

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