ヤリスと同じ最小回転半径で街中でも快適

試乗車は、EQE 350 SUVの導入記念モデル、ローンチエディションだった。EQE SUV のサスペンションはフロントに 4リンク式、リアにはマルチリンク式を採用。連続可変ダンピングシステム ADS+とエアサスペンションを組み合わせたAIRMATIC を標準装備。ドライバーが好みに応じてComfort、Sports、ECO、Individual に加え Offroadとドライブモードの切り替えが可能なダイナミックセレクトも備えている。
ステアリングホイールに備わるシフトパドルを使って、回生ブレーキによる減速度は3 段階(D+、D、D-)で設定可能。このほか、D Auto モード(インテリジェント回生)では、先行車を検知すると、車間距離を自動で調整しつつ停車に至るまで可能な限り追従してくれるなど、慣れると非常に扱いやすいものだ。
そしてEQE SUV には新機構としてディスコネクトユニット(DCU)が搭載された。これはフロントアクスルにクラッチを設け、走行状況に応じてクラッチを切りはなし前輪をフリーにして抵抗を低減。高速巡航時などは後輪駆動(2WD)にすることで電費をかせぐというものだ。その作動状況はモニターで確認することができるが、ドライバーはまったく気づかない。今後、同じプラットフォームのEQS SUVなどにも導入予定という。


パワー感、静粛性、乗り心地、直進安定性、ハンドリング、あらゆる面において洗練されている。電気自動車であっても、メルセデスらしさはまったく失われていない。そして、街乗りでもっとも重宝するのが、後輪が最大10度、前輪と逆位相するリアアクスルステアリング。いわゆる4WSだが、最小回転半径は内燃エンジンモデルのGLE(400d)が5.6mなのに対して、EQE SUVのそれは4.8m。これはトヨタ ヤリスと同じ数値といえば、どれほど小回りが利くのか想像できるだろう。Uターンする場面や狭い駐車場に駐車する際にはきっと驚くはずだ。
さらに日本仕様の特別な機能としてV2H(Vehicle to Home)/V2L(Vehicle to Load)を搭載する。これはオプションの機器を使うことで、車両を家庭の太陽光発電システムで得た電力を貯蔵する蓄電池として利用したり、逆に停電時などに家庭に電気を送る予備電源として活用できるというもの。アウトドアや万が一の災害時にも役に立つ。
AからSまでラインアップが揃ったことに伴い、メルセデスの電気自動車は着実に進化している。クルマを2台以上所有するライフスタイルを送っている人ならば、そろそろ1台は電気自動車という選択は大いにアリだと思う。
文・藤野太一 編集・iconic