舞台は英国貴族の屋敷(グッドウッド・ハウス)とその広大な、あまりに広大な敷地である。庭でクルマを走らせた、という故事にちなんだイベントをヒルクライムレースとして30年前に始めたのが7月に開催される“フェスティバル・オブ・スピード”(FoS)。もちろん庭の道(2km弱もある! )を使って行われる。もう一つ、9月のイベントは“リバイバル”と言って、こちらは25年前に復活したじい様のサーキットで催されている。FoSの商業的な成功を受けて、サーキットを復活させることができたというわけだ。
貴族の名は11代リッチモンド公爵(他にも爵位をいくつか)。彼のアイデアが優れていたのはイベントをまずはクラシックスポーツ&レーシングカーに絞ったことだった。おりからミッレミリアやヴィラデステなどクラシックカーをテーマにしたイベントが世界で始まりつつあった。リッチモンド公爵(当時はマーチ卿)はグッドウッド・サーキットをクラシックカーレースの聖地として復活させるべく、まずは庭のイベント(ヒルクライム)もまたクラシックカーを集めて行った。その際、昔のレーシングカーやチーム、ドライバーに焦点を当てたことで“リユニオン”的な雰囲気を醸し出すことに成功。それがたくさんの観客を集めることにつながった。“懐かしさ”はいつの時代もビジネスの有力な源泉だ。人が集まるとなれば、自動車メーカーも放ってはおかない。今では“走るモーターショー”として多くのグローバルブランドがブースを構え、最新モデルのデモ走行を披露する。イベントの規模は30年前の10倍となり、先代から続く公爵家の建て直しに一役買うことができたのだった。