自由に操ることのできる見晴らしのいいクルマ
都内を出発してみれば、やはりというべきか。まずは自分がかなり大きなクルマをドライブしていることに気付かされる。視線の高さを否応なしに実感してしまうからだ。小型トラック並みという感覚で、普段は威張っている国産高級ブランドのミッドサイズSUVや大型ミニバンが随分と遠慮がちな大きさに見える。
それでも運転には一切不安を感じない。上半身(ボディ)と下半身(シャシー)に一体感があるからだ。自分の思い通りに動いているという確信があって、狭い路地でも気にせず入っていける。結局のところバスより大きい乗用車なんてない。
高速道路に入る直前のインターチェンジ内で連続するコーナーから新型レンジローバーは本領を発揮した。背の高いクルマにもかかわらず、スポーツカーのような安定感でクリアする。ちょっと曲がりきれないかなと思った時点でアクセルペダルを少し緩めたなら、自然な感覚でノーズが内側を向く。決して向きすぎはしないし、妙な横揺れもない。だからコーナーの曲率の変化もさほど気にならず、アクセルの操作だけでキレイに曲がっていけた。
嬉しいことに、しっかりとしたクッションと堅牢なボディがドライバーへの不安要素の伝達を一切封じ込めている。こうなればもうボディサイズなど気にすることはない。ただただ自由に操ることのできる見晴らしのいいクルマだ。
高速道路でのクルージングも驚くべきものだった。前後左右に気持ちの悪い揺れ残りを感じることなど皆無。SUVのクルーズフィールとはまるで思えない。
BMW製となったV8ユニットは、ウルトラスムースに回り、右足を心地よく刺激してくれる。燃費を考えたならディーゼルという選択もあるが、高回転域までキレイに吹け上がるV8フィールを知ったなら、「これが最後のピュアマルチシリンダー」と覚悟を決める他なくなるだろう。もっとも、考えることは皆さん同じらしく、現在、V8モデルは一部を除いてオーダー停止らしい。
京都までのドライブはあっという間だった。ぶっ飛ばして短時間で到着したわけじゃない。精神的に早かった。順調に走って5時間半の道のり。6時間以上に感じるクルマもあるし、レンジローバーのように4時間程度で着いてしまったような感覚になる場合もある。もちろん後者のパターンなら疲れも少ない。
京都の街中を走ると、その大きさを再び実感してしまう。けれどもすでにクルマはすっかり身体に馴染んでいて、すぐにでも東京へとノーズを向けていいと思えるほどにパートナーとしてすっかり意気投合していた。