鴨志田康人氏が語る「シャルベ・イズム」とは

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鴨志田康人さんの愛用品から考える
一生大定番の条件とは?

鴨志田康人氏が語る「シャルベ・イズム」とは

日本が誇る最高峰の洒落者に“一生定番論”をたっぷりと語っていただいた。人生を共にできるほどの名品、その定義とは? 鴨志田さんの話から、キーワードが見えてきた。

“憧れ続けられること”

鴨志田さんの一生大定番ブランド❸
CHARVET(シャルべ)

鴨志田さんのファースト・シャルべ

Kamoshita’s first CHARVET Since Late 80’s
「気品のあるワイドピッチのストライプに惹かれて購入しました」と語る、鴨志田さんのファースト・シャルべ。現行コレクションとはタグのデザインが異なっている点にも注目だ。ちなみに、ゴールドのゴムカフリンクスもシャルべ。エレガントかつ遊び心も効いている。

着るたびにロマンを感じ、それに相応しくあろうと思う。
──名品と称されるものには、そんなパワーがある

定番という言葉からは「身近なもの」、「気の置けないもの」というイメージが想起されます。実際そういった要素は欠かせないと思いますが、それだけでは一生大定番を語ることはできません。大切なのは、愛情を注ぎ続けたいと思わせてくれること。そのためには、常に“憧れ”の感情を湧き起こさせる魅力が必要です。僕にとっては、パリのシャルべがまさにそんなブランドなのです。

ヴァンドーム広場に構えるシャルべのブティック。そこに入るときは、今でも独特な高揚感と緊張感に包まれます。数千種類の生地が積まれたオーダールームは、さながらワンダーランド。バイヤーとして、またひとりの客として、訪れるたびに様々なインスピレーションをもたらしてくれます。

あれは2000年ごろのことだったでしょうか。’80年代から魅了され続けてきたシャルべをどうしてもUAで取り扱いたいと、バイヤーとして門を叩きました。当主のコルバンさんに“面接”をしてもらい、「私はこのお店でシャツを購入したことがあります」と伝えると、「そうかい、ちょっと待って……」と開いたのは、ビスポークの顧客台帳。僕が買ったのは既製品でしたから当然そこに名前が載っているはずもなく、格式の高さを思い知らされたものです。ちなみに、今はすべてオーダーで作ってもらっていますから、ちゃんと名前が載っているはずですよ(笑)。

公私ともに親しくなってからは、パリを訪れるたびに昼食を共にし、散歩して、カフェでコーヒーを飲むのがお決まりになりました。時折アートギャラリーなどにも連れていってくれるのですが、彼のアートへの造詣には驚かされます。同時にテキスタイルにも精通していて、それがシャルべのデザインにおける基盤になっているのです。

シャルべの魅力、それは「Good Taste」の一言に尽きます。ニクいほどに趣味がいい。シャルべの色柄を派手と捉える人もいるかもしれませんが、クラシックの真髄は常識と少しズレたエキセントリックなところにも存在しているのです。そして時代をしっかり把握しながら、唯一無二のシャルべ・イズムを貫いている。変わらないようでいて少しずつアップデートを重ねていて、いつ見ても新しい。ハバダッシャリーの最高峰として、心からリスペクトしています。

憧れの名品を手に入れたとき、少しの優越感を覚えつつ、自分もその品に相応しくあろうと気持ちを新たにした……という経験をおもちの方も多いことでしょう。僕にとってシャルべは、そんな意識をいつも呼び起こしてくれる定番です。今は憧れ、でもいつかは気負わず着こなせるようになりたい。そう思い続けながら、もう30年以上付き合い続けています。

……と、こんな具合に僕の一生大定番論を述べさせていただきましたが、「定番」の条件は人それぞれだとも思います。スペックやロジックで定番を定義しようとする向きもありますが、それだけで片付けられるものではありません。結局一番重要なのは、自分が心から愛着をもてるかどうか。なので、皆さんそれぞれの「一生大定番の条件」を考えてみてください。その過程で色々な発見があるでしょうし、なにより楽しいと思いますよ。
(談・鴨志田康人)

2024

VOL.341

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