車重を増やさず、コーナリング性能を向上させる新技術を採用

目に見える部分では、ダークブルーの幌(ほろ)が特徴的。そしてレイズ社製鍛造16 インチアルミホイールを装備する。1 本当たり約800g、合計約3.2kg の軽量化を実現。そしてブレーキには、ブラック塗装にブルーの文字というシックなカラーのブレンボ社製キャリパーとローターを採用。従来のSよりも、バネ下重量を低減し、その軽さに合わせてダンパー、コイルスプリング、電動パワーステアリング、エンジン制御などを専用セッティングしたという。
そして、目に見えない部分では、全グレードに新技術の「キネマティック・ポスチャー・コントロール(KPC)」を導入している。これは、ブレーキをかけることで車体を引き下げる「アンチリフト力」が発生する構造になっているロードスターのリアサスペンションの特性を、最大限に活かしたものという。日常域ではこれまでと変わらない、ロードスターらしい軽快な挙動を保ちつつ、Gが強めにかかるようなコーナリングの際にはリアの内輪側のブレーキをわずかにつまんで、ロールを軽減しながら車体を引き下げて旋回姿勢をより安定させるものだ。従来モデルと乗り比べるとその差は歴然としており、特に限界域では車体の浮き上がりが抑制されることで、スタビリティが高まり安心してコーナーに進入することができる。これがすごいのは、あくまで制御方法の違いであって、KPC装着による重量増加は1グラムもないという。これを開発した操安エンジニアにも話を聞いたが、その論理的思考しかり、マニアックな走ることへの情熱しかり、ほとほと感心するほかない。
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電動化の波が押し寄せるなか、大容量のバッテリーを搭載し、車両重量2トン超のクルマも珍しくない。そうしたなかで、このロードスターに乗ると、軽さは正義なのだとつくづく感じる。これほどまでに運転が楽しくて、燃費が良くて、使っている部品のことやタイヤ、路面攻撃性まで考慮すれば、現時点では世界トップクラスのサステイナブルなスポーツカーだと思うのだ。
写真=柳田由人 構成=iconic 文=藤野太一