同じモデルに多彩なパワートレインを用意

308が対ゴルフ包囲網で他のライバル車から頭ひとつ抜きん出たのは、先代の308IIが2014年に欧州COTY(ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー)を獲るなど、グローバルな高評価と成功を収めたことだ。2013年の同賞はゴルフ7だったので、フルモデルチェンジが1年後発であることを最大限に生かす戦略でもあった。それはゴルフの弱点を突き、上回る何かを提案するだけではない。308としての独自路線を認めさせ広める戦略だ。
308が打ち出したのは、限りなくスマホかタブレットに近い直観的インターフェイスの最新インフォテイメントと、ガソリンとディーゼル、PHEV、さらに来年にはBEVをも追加する、そんなマルチ・パワートレイン戦略だ。現ステランティス・グループの仏サイドこと旧PSAグループは、「パワー・オブ・チョイス」といって、電動化の度合いと選択はメーカー主導ではなく乗り手に任せる姿勢を貫いてきた。よってBEVを別シリーズの別プラットフォームに分化派生させるのではなく、2代目308の他、数多くのPSA車が用いる低重心・高剛性のEMP2プラットフォームを進化させ、「EMP2 evo.3(エヴォ・トロワ)」という同一プラットフォームにすべてのパワートレインを載せる新しい308を開発してきた。
特徴はさらなる軽量化と剛性の最適化に加え、リアアクスル周りに顕著だ。PHEV用のリチウムイオンバッテリーを後車軸の真上に搭載するため、その後車軸モジュール自体がコンパクトなマルチリンク・サスペンションを含んでいる。かくして新しい308ハッチバックのホイールベースは旧型+60㎜の2680㎜だが、SWはわずか+50㎜の2730㎜となる。ハッチバックは全長4420×全幅1850×全高1475㎜、SWは4655×1850×1485㎜。ロー&ワイド化だけでなく、ボディパネルを構造に対して近づけ絞り込むことで前面投影面積を減らし、燃費やEVモードでの走行距離を稼いでいるという。シンプルながら表現として強めの外観デザインは、好悪の分かれどころだが、数年経つと不思議と目に馴染むのが毎度のプジョーらしさでもある。また荷室容量はPHEV版でも、ICE(内燃機関)版よりフロアパネル下の約50リッター分小さいだけで、ハッチバックもSWも床上容量の使い勝手はほぼ変わらない。SWのリアシートは4・2・4分割だ。

いずれ新型308の本領のひとつは、インテリアの静的質感にある。小径ステアリングの上から液晶メーターパネルを視認するプジョーi-コクピットは健在で、多面体を展開したようなダッシュボードの意匠に10インチのタッチスクリーンと「i-トグル」と呼ばれるワイドなタッチパネルが際立つ。i-トグルはホームを含め6つのエリアで構成され、上のスクリーン内で長押ししたアプリやウィジェットをドラッグ&リリースすれば、頻繁に使うアプリや機能のタスクローンチャーとして編集が可能だ。タッチ式のみならず、すぐ下には従来通りの物理的なトグルボタンも設けられ、ハザードランプやデフォッガーなどはこちらに分けて配されている。これが新世代インフォテイメントの長所であり、ナビの地図をメーターパネルに表示するなど、すべての機能が日本語環境にも対応するという。このインフォテイメントとOSの開発にはクアルコムとハーマンが関わり、上位セグメントを含めて今、もっとも洗練されたひとつといえる。他にもエアコンには、車内温度だけでなく空気の質を適正化する「AQS(エアクオリティシステム)」が組み込まれている。