MX-30EVはレンジエクステンダーへの布石なのか?

現在のところ、電気自動車が社会に求められているモビリティであるかのような風潮が漂っている。そんななか、アメリカで9月に販売を開始した、マツダの電気自動車「MX-30EV」の販売台数が明らかになった。12月に北米マツダのホームページ上で公開されたのは、11月までの販売実績。「10月~11月期でMX-30EVは55台、11月末までの通年、120台」という数値から、9月~10月期は65台であったことがわかる。

10~11月期のアメリカでのマツダ車の販売台数は2万602台なので、MX-30EVの販売シェアはたったの0.27%。MX-30EVは今のところカリフォルニア州のみでの販売なので、販売台数が少ないのは致し方ない。が、それにしても月間販売台数が100台にも満たないのは、電気自動車が本当に消費者に求められているのか疑念を抱いてしまうほどだ。
もっともMX-30EVは特殊な事例かもしれない。というのも、MX-30の真打ちはこれから登場する、と言われている“レンジエクステンダー”(航続距離延長装置)としてロータリーエンジンを搭載する、PHEVである。

邪推をすれば、マツダはMX-30EVをPHEVとして開発していたのに、あえてレンジエクステンダーを取り外し、BEVへの取り組みをアピールするためにMX-30EVを投入したのではないか? ただ、いくらアメリカの平均走行距離が一日約40マイルとはいえ、MX-30EVのEPA(米国環境保護庁)による航続距離推定値が100マイルは消費者にはネックになっているのだろう。
もちろん、マツダとして航続距離の不安への対策を打ち出している。MX-30EV購入者には500ドル(邦貨換算約5万5000円)相当の充電クレジットが付与されるほか、3年間「MX-30 エリート・アクセス・プログラム」と呼ばれる特典が付与される。これは年間10日間、電気自動車以外のマツダ車を借りられるというもの。要は航続距離が不安になる場面においては、内燃式エンジン搭載車を借りられるのだ。
先日、トヨタによるBEV戦略もついに明らかにされ、自動車市場におけるBEVの存在感は今後、ますます高まる。最近、アメリカ・インディアナ州の州立総合大学「パデュー大学」がフォードと共同研究開発を進めている充電ケーブルの進化により、“BEVの充電時間は5分に収まるかも”という発表もなされた。ただ、なぜフォードとの研究開発なのに、YouTube動画で日産リーフが用いられているのかは謎だ。

充電ステーションの拡充はもちろんだが、充電時間の大幅短縮もBEVの普及に欠かせない。あとは地理的要素に左右されない、安価でクリーンで安全な発電方法が開発されることを待ち望むだけか……。
自動運転も現実のものになりつつあるし、自動車業界はパラダイムシフトを迎えている。
文=古賀貴司 写真=マツダ 編集=iconic