ICE版に引けを取らない乗り心地やハンドリング

いざ乗ってみると、Bセグでは無敵といっていい内装の質感の高さはそのまま、キャプチャー E-テックは50㎞/h近くまで電気だけで力強く、静かに走ろうとする。市街地で多用する50㎞/h以下の速度域は8割がた電気モーターで賄えるため、街乗りでは静粛性が際立つ。もちろん時折、50㎞/h少し手前の速度域でICEが介入しても、ボワン! とエンジン始動の衝撃や振動が伝わってくるどころか、ヌルリとリレーするように、滑らかに動力源が切り替わる。ある程度の速度域で加速中でも巡航中でも、アクセルペダルの踏みしろで違和感を感じることもない。切り替えマナーはスムーズだが、駆動フィールはダイレクトなのだ。
当初、4気筒1.6リッターの96ps/148Nmという、現代の目にはずいぶん中途半端に見えたエンジンが組み合わされた点を、不思議に思っていたが、走っていると納得できる。ICEは相対的に低負荷走行で用いる動力源という役どころなのだ。国道やバイパス、高速道路といった状況でエンジンがかかっていることは感じられても、少しアクセルを上げると、スッとコースティングに入る、つまりICEがいい意味でサボるのも印象的だ。シフトレバーをDポジションからひとつ手前に引けば、もちろんBモードになって減速による回生の度合いを強められる。
たったの1.2kWhに満たないバッテリー容量だが、それだけ重量増は最小限にとどめられており、何より乗り心地やハンドリングといった動的質感の点で、ICE版に引けを取らないところがいい。強いていえば低速域の乗り心地で路面の継ぎ目をやや神経質に伝えてくることはあるが、マイルドなようで必要とあらばスポーティな粘りをも見せる、キャプチャーらしいフットワークは健在だ。
ルノー キャプチャーのディテールをチェック!(画像7枚)
気になる燃費は、信号の少ない道を多用したとはいえ18㎞/L近くを記録した。もちろん、もっと燃費に優れたハイブリッドは日本市場では無数に選べるが、フレンチ・コンパクトSUVらしいインテリアの妙と、高速巡航でのフラットライド、さらには電気ならではのサクサクしたドライバビリティを、充電で悩むことなく楽しめるのは、小さからぬメリットだ。初めての輸入車としても、あるいは人とちょっと違ったハイブリッドとして、おすすめできる1台だ。
文=南陽一浩 写真=ルノー 編集=iconic