珠洲市での生活は、東京での生活と比べると、まさに別世界でした。朝日と共に起き、朝食後には海辺や裏山を散策。日中は海を見渡すデスクで、夕方は見事な夕焼けに包まれながら、夜はまきストーブの横で暖を取りながら執務にあたります。一日を通して人工音がほとんど聞こえず(そもそも人がいませんし)、邪魔が入ることもありません(たまに野良猫が遊びに来ます)ので、普段よりも仕事がはかどるように思います。ただし、生活を通して触れることができる情報量が東京に比べれば格段に少ないため、本を読んだり人と話したりというようなインプットの機会は意識的に持つ必要があります。ただそれも、昨今のオンラインサービスの急速な普及によって、リアルな手段と比べても遜色なく入手できました。
中でも最も変わったものは、食事です。コロナ禍によって外食をすることがなくなり、1日3食、妻と一緒に自宅で食べるようになったのも大きな変化ですが、珠洲ではそれ以上の変化がありました。食卓に上がるほぼすべてものを、地元で採れたもので賄えるようになりました。いわゆる、地産地消の食生活、というやつです。
地元のスーパーや農協の直売所に行くと、その日の朝に採れたばかりの新鮮な野菜を簡単に入手することができます。私たちのお気に入りは、JA珠洲市が運営する「グリーンセンター」という直売所。地元の農家さんたちが持ち込んだ様々な旬の野菜を買うことができます。生産者さんの名前がわかるのも、楽しいです。買っているうちに「すや子さんの小松菜は美味しい」とか、お会いしたこともないのに勝手にファンになったりします。
魚を買うときは地元スーパー「フードはまおか」がおすすめです。地物の魚が何しろ安い。のどぐろ4匹353円とか、ちょっと目を疑う価格です。安いものは、いわゆる「端物」と呼ばれる規格に合わない小さなサイズのものが多いのですが、口に入ってしまえば同じです。
大物が欲しい場合は、自分で釣りに行きます。「木ノ浦ビレッジ」から車で10分以内に漁港がいくつもあり、そこで遊漁船を営んでいる船長さんが何人かいらっしゃいます。私のお気に入りは狼煙港のシーク号です。数年前にUターンしてきた若い船長ですが、大物釣りですっかり有名になり、最近はなかなか予約が取れません。