使い勝手はそのままに、スタイリング重視のSUVクーペ
「SUV(Sport Utility Vehicle)」は、いまや世界的にもっとも人気のあるカテゴリーだ。日本語で“スポーツ用多目的車”と訳されたりするが、アウトドアやスポーツ用途だけでなく、着座位置が高いこともあって見晴らしがよく、運転がしやすいことからシティユースとしても人気が高まっている。
そうした中で近年、アウトドアでの悪路走破性や荷室の広さといった実用性より、もう少しスタイリングを重視した派生モデルが登場するようになった。一般的にはSUVクーペと呼ばれるものだ。
アウディはこのSUVクーペに“Sportback”(スポーツバック)という名称を与えている。これは4ドアクーペとも呼ばれるA5 スポーツバックやA7 スポーツバックの流れるようなルーフデザインをSUVモデルに取り入れたことを意味する。アウディ初のSUVクーペは、電気自動車のe-tron スポーツバックで、それにコンパクトなQ3 スポーツバックが続き、そしてこのたびアウディのビジネスにとって重要なポジションを占めるミッドサイズSUVのQ5に、スポーツバックが追加された。
エクステリアは通常のSUVモデルであるQ5のデザインコンセプトを踏襲しながらも、シングルフレームグリルやルーフ、前後バンパーなどをスポーツバック専用のデザインとした。SUVモデルとスポーツバックとを一目で見分ける方法は、ルーフレールの有無。スタイル重視のスポーツバックからは省かれている。
ボディサイズはQ5比で、全長+15mm、全高−5mm、全幅に変更はない。したがってクーペスタイルといっても、後席の居住空間の減少はほとんどなく、身長約178cmの大人が座っても窮屈に感じることはない。ラゲッジスペースの容量もQ5の520/1520リッター(シートバック格納時)に対して 510/1480リッターと使い勝手のよさはキープされている。
グレード構成は「advanced」とよりスポーティな「S line」の2種類があり、これらグレードによってもグリルやバンパーの意匠に変更が加えられている。試乗車はS line仕様をベースとした導入記念特別仕様車の「Q5 Sportback 40 TDI 1st edition」だった。フロントマスクにはアルミニウムルックインサート付ハニカムメッシュグリルとマトリクスLEDヘッドライトを採用。また、この特別仕様車には、新テクノロジーとしてOLED(有機EL)リヤライトを装備していた。前走車や対向車を検知して自動的にヘッドライトの照射エリアを切り替えるマトリクスLEDライトをはじめ、流れるように光るダイナミックターンインディケーターなど、アウディはライティングテクノロジーにこだわりをもつブランドだ。今回はさらにOLEDを投入し、緊急時の警告機能などを強化している。
インテリアでは今春モデルチェンジしたQ5と同様に最新のインフォテインメントシステムを採用。10.1インチにサイズアップしたセンタースクリーンはタッチパネル式となった。一方でエアコンの温度調整や走行モードの切り替えといった使用頻度の高いものには物理スイッチを残して操作性のよさをキープしている。