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これ以上の完成度をもつ1台が生まれうるのか?

メガーヌ ルノー・スポール トロフィー
ボディサイズは全長4410×全幅1875×全高1465mm、車両重量は1460kg(ベーシックグレードは1480kg)。

低速域での足まわりの動きは、さすがにやや固いと感じさせるが、不思議と角がない、嫌な固さではないというか、街乗りでも延々と我慢を強いられる感覚ではない。HCC(ハイドローリック・コンプレッション・コントロール)と呼ばれるメガーヌR.S.のダンパーは、ダンパー・イン・ダンパーの二重構造を採用することで硬軟いずれにも対応し、突き上げのような短く強い入力も巧みにいなしてくれる。

徐々にペースを上げていくにつれ、路面のホールド感と無駄のないボディコントロールの質の高さが、感じられる足まわりなのだ。

メガーヌ ルノー・スポール トロフィー ホイール
19インチアロイホイールはベーシックグレードとトローフィー(写真)で異なるデザインを採用。

この足まわりの質の高さに加え、メガーヌR.S.にあって同クラスの他のホットハッチにない機構として、4コントロールと呼ばれる四輪操舵システムが、切れ味となってハンドリングに興を添える。これは前輪のステアリング操舵と約60~100㎞/hという速度域を閾値に、後輪側をも逆位相もしくは同位相に操舵するシステムだ。低速コーナーでは後輪は外側舵へ、高速コーナーでは内側舵となるのだが、前期型より明らかに黒子に徹するフィールに進化した。

それでいて、目の前のコーナーの曲率が予想以上に回り込んでいても、際限がないのでは?と思わせるほどに、舵が効いてしまう。とにかく骨太なハンドリングでありながらアンダーステア知らず、かつ接地感が途切れることがないのだ。

メガーヌ ルノー・スポール トロフィー

もうひとつ、前期モデルより向上していると思わせたのは、エキゾーストノート。ノーマル時に加えて「スポーツ」「レース」といったドライビング・モードに応じて切り替わるアクティブバルブを備えたスポーツエキゾーストが、なかなか勇ましい。もちろん効率面でも効果があるのだろうが、コクピットに伝わってくる音質自体が、よりメガーヌR.S.トロフィーのキャラクターに相応しい、野太いものとなったのだ。

メガーヌ ルノー・スポール トロフィー

いずれ後期型へと生まれ変わったメガーヌR.S.トロフィーMTの最大の特長は、エンジンにしろハンドリングやシャシー性能にしろ、MT操作で全身かつ五感のすべてを使って引き出せる「スポーツドライビングの古典」的な経験、その質を、新たな高みへとアップデートさせた点にある。エンジンパワーやシャシーのハンドリング能力だけでなく、操る人間の能力を引き出すことでスポーツドライビングの本質に迫るという、ジャッジが効いている点こそが、優れてフランス的だ。

しかも、494万円という価格は欧州Cセグのハッチバックとして高いように見えるが、ドイツ車の同セグメントが軒並み600万円前後になってきた事情を鑑みれば、かなりの買い得感ではある。加えて内燃機関のFFスポーツとして、果たしてこの先、これ以上の完成度をもつ1台が生まれうるのか? という視点でも、忘れてはならない1台だ。

文=南陽一浩 写真=柳田由人、ルノー・ジャポン 編集=iconic

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