ポルシェが目指す近未来のビジョンを世界に示す、タイカン
今後増えるBEVラインナップの第一弾
タイカンはポルシェ初の完全バッテリー駆動電気自動車(BEV)だ。とはいえ「いよいよスポーツカー界にもBEV時代がやってきた」、と思うのはちょっと早計だ。
というのも、タイカンはポルシェ初のBEVという意味では特別であっても、ポルシェというブランドの価値を代表する存在では決してないからだ。そのことを理解してもらうために、まずは同社が展開するクルマのラインナップをおさらいしておこう。
BEVモデルの存在はブランドの発展には欠かせない
ブランドのコアバリューはいまだ911シリーズにある。1960年代半ばから半世紀以上にもわたり作り続けられ、誰もが認める、世界で最も有名なスポーツカーだ。
911の存在があってこそのポルシェ。逆に言うとポルシェがこの先911のピュアEV化を明言するようなことがあれば「いよいよスポーツカーにもEV時代が到来した」と言っていいだろう。
911の魅力はほとんど全て、水平対向6気筒エンジン(フラット6)をリアアクスル(車軸)より後ろに積むことに拠っている。リアエンジン・リア駆動(RR)という今となっては世にも稀なパッケージを技術的にモノにすることが911を唯一無二の存在へと発展させてきた。それゆえ時流に乗って「さっさと電気モーターに積み換えてみましょう」とはいかない。それと引き換えに他のモデルでは電動化を推し進める必要がある。ブランドとしてのCO2の排出量を抑えることができるからだ。
ポルシェにはスポーツカーの入門用としてミッドシップ2シーターのクーペ&オープンであるボクスターとケイマンもある。パッケージ的にはバッテリー搭載向きでもあるから、ひょっとするとBEVが早々に登場するかもしれない。
残りは全てマルチドアのスポーティな実用車となる。SUVのマカンとカイエン、サルーン&シューティングブレークのパナメーラとタイカンだ。これらは電動化待ったなし。なかでもポルシェとしてサスティナビリティにも真剣に取り組んでいるという姿勢の象徴として売り出したのが初のBEV、タイカンというわけだった。