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パリの趣にあふれる発色と“縮み”や“ねじれ”が真骨頂

M.E.  今回は「大人のTシャツ&ポロシャツ」がメイン特集ということで、当連載もポロシャツをテーマにお話を伺いたいと思います。

西口  承知しました。ヴィンテージのポロシャツといえば、やはりフレンチラコステは外せないですね。

M.E.  通称“フレラコ”ですね。文字どおりフランスで生産されたラコステのポロシャツという理解でよろしいでしょうか?

西口  そうですね。2010年代にフランス製ラコステが復刻されたこともあったのですが、ヴィンテージ市場でフレラコといえば’60 〜’90 年代のものを指します。なかでも大定番なのが「L.12.12」。今なお販売されている偉大な傑作ですね。その後生産拠点が日本に変わって現在に至りますが、シルエットやデザインなどのレシピはフランス製時代から変わっていないとされています。

M.E.  それは凄い話ですね。でも、フレラコも現行品もレシピは同じなら、なぜフレラコが珍重されているのでしょうか?

西口  大きな理由はふたつあると思います。ひとつめは、フレラコならではの色使い。昔も今も、「L.12.12」は実に多彩なカラーバリエーションが展開されていますが、時代によって発色が結構違うのです。フランス製時代、とくに’80 年代ごろのものは、レモンイエローやミントグリーンなどパリ的なニュアンスを強く感じさせる色みが充実していました。現行の「L.12.12」は、どちらかというとはっきりしたソリッドな発色のものが多いので、独特の柔らかい色みを求める方にフレラコが支持されているというわけですね。

M.E.  なるほど。フレンチトラッドな雰囲気をより深く味わいたいなら、フレラコがいいということですね。では、もうひとつの理由とは?

西口  それは“縮み方”の違いです。もともとのシルエットは同じでも、フレラコと現行品では洗濯を重ねたあとの変化に大きな差が出てくるのです。現行品はほとんど縮まず、型崩れも起きにくいのに対して、フレラコはかなりの縮みが発生します。それに伴って、全体に“ねじれ”が生まれてくるのも特徴ですね。ちょうどヴィンテージのリーバイスのような感じです。襟のリブにも縮みが出てヨレたような感じになってくるのですが、それが味わい深いんです。

M.E.  ランダムな経年変化が個性になっているということですね。

西口  そのとおりです。単純にクオリティだけ見れば、安定している現行品のほうがはるかに優れているのですが、フレラコには欠点があるからこそ味もある。そこがヴィンテージファンを魅了するんです。

M.E.  独特のロマンを感じますね。ところで、それだけ個体差があるということは、選びの際にも注意が必要そうですが……。

西口  はい。タグのサイズ表記は同じでも、ものによって縮み方に差がありますので、できるだけ試着してから買うことをおすすめします。それから、なかには前オーナーによってお直しがされているものもありますので、オリジナルを尊重する方はそのあたりもチェックしてみてください。少し前までのスリムフィット全盛時代には、入手後に着丈を短く詰める方も多かったですから。

オーバーサイズを選んで優雅に着こなすのも粋

M.E.  ネットでの購入時には要注意ですね。少し話は変わりますが、ポロシャツの今どきなフィッティングについて気になっている読者も多いと思いますので、そのあたりのアドバイスもお願いできますでしょうか? 数年前まではイタリア人に倣ってピッタリとしたフィットを選ぶのが正解と言われていましたが、最近はそんな常識も変わりつつありますよね。

西口  確かに、最近はゆったりしたフィッティングを選ぶ方も増えてきています。ただ、闇雲にオーバーサイズを選べばいいというわけではなく、スタイリングによって使い分けるのがいいと思いますね。たとえば腰周りにゆとりのある2プリーツパンツに合わせるなら、ポロシャツもゆとりのあるフィッティングで、細身のジーンズとコーディネートするなら、ジャストか1サイズアップくらいのポロシャツを選んで……という具合です。自分のサイズはこれ、と決めつけず、着こなしに応じて柔軟に選んでいただきたいですね。ちなみに、オーバーサイズのものを選んだとき着丈が長すぎるかなと感じたら、裾をパンツインして着るのもおすすめです。ウエスト周りでブラウジング(生地がふんわり溜まること)させて、クラシックに装うといいですね。その場合、上にジャケットなどを羽織ってインナー使いすると、コーディネートがまとまりやすいと思います。

M.E.  詳細なご助言ありがとうございます。ところで、ラコステのポロシャツは多くの著名人たちにも愛用されてきましたが、西口さんが憧れるスタイルアイコンは誰ですか?

西口  やはり英国の俳優、デヴィッド・ニーヴンでしょうか。

M.E.  ジェームズ・ボンドのモデルになったともいわれる人ですね。

西口  そうですね。ラコステというと、まず思い浮かべるスタイルはアイビーやフレンチトラッドだと思います。もちろんそれらも大好きなのですが、より成熟した紳士のエレガンスを感じさせる装いにも惹かれますね。ニーヴンがラコステを着ている昔の写真が残っているのですが、それがとんでもなく格好いいんです。

M.E.  インターネットで検索すると出てきますね。彼がフランスのサン=ジャン=カップ=フェラに所有していた別荘で撮られた写真のようです。ということは、プライベートの装いを収めた写真になるのでしょうか。たっぷりとしたフィッティングのラコステに短丈のバミューダショーツ、足元はエスパドリーユを合わせていますね。

西口  まさに英国紳士のリゾートスタイルという趣ですよね。私にとって、これがひとつの理想像です。トラッドとはひと味違う、とてもノーブルな佇まいですね。

M.E.  確かに、このスタイルには痺れます。リゾートの装いということもあって、かなりビッグサイズのポロシャツを着ているようですね。

西口  そのようですね。今までのヴィンテージ市場では、サイズ2(XS)や3(S)に人気が集中していましたが、今後は5(L)や6(XL)のニーズが高まってくるでしょう。品薄になる前にチェックしておきたいところですね。

<p><strong>ヨレても美しい襟</strong><br />
「フレラコは経年変化によって、リブにも縮みやヨレが目立ってきます。普通のシャツならヨレた襟はだらしなく見えるものですが、ラコステのポロはそれが味になるから凄いですよね。洗いざらしで着ても、それが絵になるんです」</p>

ヨレても美しい襟
「フレラコは経年変化によって、リブにも縮みやヨレが目立ってきます。普通のシャツならヨレた襟はだらしなく見えるものですが、ラコステのポロはそれが味になるから凄いですよね。洗いざらしで着ても、それが絵になるんです」

<p><strong>レアなメランジ版も存在</strong><br />
「フレラコにはメランジ素材のものも存在します。現在は普通に展開していますが、フランス製時代は生産数が少なかったようで、1980年代にはほとんど見かけることがなかったそうです。ゆえにメランジのフレラコは人気が高いですね」</p>

レアなメランジ版も存在
「フレラコにはメランジ素材のものも存在します。現在は普通に展開していますが、フランス製時代は生産数が少なかったようで、1980年代にはほとんど見かけることがなかったそうです。ゆえにメランジのフレラコは人気が高いですね」

<p><strong>今後は長袖も人気上昇!?</strong><br />
「L.12.12」と同様に、今もなお展開されている「L.13.13」。リブ袖のロングスリーブという昔ながらの佇まいが今、再び新鮮で、これから人気が高まっていく予感。袖をたくしあげて着ると、大人の優雅さを演出できると思います」</p>

今後は長袖も人気上昇!?
「L.12.12」と同様に、今もなお展開されている「L.13.13」。リブ袖のロングスリーブという昔ながらの佇まいが今、再び新鮮で、これから人気が高まっていく予感。袖をたくしあげて着ると、大人の優雅さを演出できると思います」

<p><strong>色落ちしたジーンズで程よい抜け感を</strong><br />
ジーンズはリーバイス501の66後期。程よく色落ちした軽快な色みとともに、ヴィンテージならではの抜け感がノンシャランな演出に一役買っている。ローファーはジェイエムウエストンの定番「180」。</p>

色落ちしたジーンズで程よい抜け感を
ジーンズはリーバイス501の66後期。程よく色落ちした軽快な色みとともに、ヴィンテージならではの抜け感がノンシャランな演出に一役買っている。ローファーはジェイエムウエストンの定番「180」。

<p><strong>長めの着丈はタックインで対処</strong><br />
ポロシャツはぼぼジャストサイズの“3”をチョイス。「着丈が若干長く感じたので、裾をタックインしました。女性ウケは悪いですが(笑)、こうするとすっきり見えて全体のバランスがよくなります」</p>

長めの着丈はタックインで対処
ポロシャツはぼぼジャストサイズの“3”をチョイス。「着丈が若干長く感じたので、裾をタックインしました。女性ウケは悪いですが(笑)、こうするとすっきり見えて全体のバランスがよくなります」

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