
レスポンスの鋭さが加わった、しなやかで軽快な走り
「エンジンスタート」のボタンを押し、走り出す。ドライブモードで4WDを選ばない限り、通常のゼロ発進時はリアモーターだけで後輪を駆動する。バッテリー残量があるとよほどアクセルを踏み込まない限り、リア駆動のEV状態だ。急加速するとフロント側のICE(内燃機関)が目覚めて前車軸にも動力を供給するが、アクセルペダルを一定または離すと途端にエンジンは停止し、コースティングに入る。もう1段、シフトレバーを引いてBモードに入れれば充電回生が強まる。そのスムーズかつフレキシブルな動力切り替えを司るのは、フロント側のモーターと一体化されたアイシンAW製8速トランスミッション、つまり日本のサプライヤによるものだ。
リアシート下に積まれる13・2kWhという駆動用バッテリーの容量は、ボルボXC40やミニ・カントリーマンといった先行する欧州車のPHEVより大きいが、トヨタRAV4や三菱エクリプスクロスほどでもない。EVモード、つまり電気モーターだけで長い航続距離を実現しつつ、バッテリーによる重量増を抑えて走りも重視した、そんな選択といえる。今回は満充電状態からの試乗ではなかったが、現実にはモーターだけで50kmプラスアルファのレンジが見込めるだろう。
試しにワインディングでペースを上げてみた。プジョーとしては重たい1850kgの車重を心配していたが、約54:46と改善された前後配分に加え、荷重増に対応して採用されたリアのマルチリンク・サスペンションが予想を上回る仕上がりだった。ステアリングを切った時、ノーズの入りもいいが、間髪を入れず追従してくるリアの動きがすこぶるいい。また加速態勢に入る時、ICEだけなら生じるであろう刹那のラグを、リアモーターが埋めてあり余るほどの強烈トルクで押し出してくれる。この駆動レスポンスとシャシー自体の鋭さが、絶妙なのだ。4WDモードで攻めると少しアンダーステアの気も出てくるので、FRとFFと4WDを使い分けてくれるハイブリッドモードの制御がもっともバランスよく感じた。
4WDのPHEVになって、前車追従だけでなく再発進も自動化された最新ADASを備えても、モーターによるトップアップが鋭さや力強さとなってほとばしる点に、3008 GT HYBRID4最大の特長がある。プジョーらしいしなやかなで小気味よい乗り味は、PHEVでも健在というより、見事に進化を遂げていたのだ。
今月の1台 PEUGEOT 3008 GT HYBRID4(画像5枚)
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[MEN’S EX 2021年7月号DIGITAL Editionの記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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