レースをイメージさせないエレガントな内外装
ロングノーズ&ショートデッキの典型的なベルリネッタスタイル。けれども、きれいにまとめ過ぎないあたりに、独特のエレガンス表現を見た。まさにイタリアンクラシックである。鋭く尖ったフロントノーズはややバランスを崩しながら下がり、2+シートのキャビンは低く小さくまとめられて、リアデッキも大袈裟ではない。代わりに前後のフェンダーラインはグラマラスで、美しい時代のフェラーリに共通するデザインだ。ローマにはサイドフェンダーのSFシールドエンブレムは似合わない。そう、このクルマからはスクーデリア・フェラーリ=レースの匂いが立ってこないのだ。
インテリアデザインも機能重視だった最近のフェラーリの中では、エクステリア以上にエレガントだ。デュアルコクピットスタイルと名づけられた室内は左右のパッセンジャー席が美しく仕切られており、ドライビングに熱中することはもちろん、その居心地そのものを楽しむ空間にもなっている。
リトラクタブルハードトップを持つポルトフィーノをベースとしつつ、その7割を新設計とし、パワートレーンを進化させて積み込んだ。一昨年末のデビュー時にマラネッロは“ポルトフィーノのクーペ版ではない”、とアピールしたが、後にほとんど同じスペックを持つポルトフィーノMが登場したことで、結果的には兄弟車の関係になったと言っていい。
注目すべきはやはりフロントミドに積まれたパワートレーンだ。3.9リッター直噴V8ツインターボエンジンの最高出力は620psにまで引き上げられ、新開発の8速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を組み合わせた。従来の7速DCTに比べて小型かつ軽量であり、変速スピードも上がったうえ、エネルギーロスも格段に減らされた。燃費性能の向上にも大いに寄与する。