ベントレーといえば敷居の非常に高いブランドではあるけれど、一度乗り込みさえすれば、そのドライブ感はフレンドリーそのものである。
ひとしきりコンチネンタルGT V8の走りを“ならニュル”で楽しんだのち、再び名阪国道から名古屋、そして東京を目指す。帰りは日も暮れていたので、旧東名ではなく新東名でいいだろう。
8速のデュアルクラッチトランスミッションを組み合わせている。日本の高速道路速度域であれば、8速2000回転で十分、クルージングできる。ちなみに積まれている4リッターV8ツインターボエンジンは2000回転から最大トルクの770Nmを発揮するから、基本、8速に固定したままでも追い越しなどに不便はない。
淡々と走り続けると、8気筒のうち半分のピストンが仕事を休む。気筒休止というシステムで、その分、燃費を稼ぐことができる。その切り替わりを体感することはほとんどなく、必要とあれば瞬時に8気筒の力を復活させるから、そのあたりは特に気にかけることなく、ドライバーはただリラックスして走っていればいい。
疲れていたので、帰りはほとんどクルーズコントロールを入れ、車間制御システムのお世話になった。前走車との距離が詰まれば自動的に減速し、開けば加速する。その具合がとてもよろしい。自分の加減速のタイミングにも合っているうえ、ぎこちなさが皆無。だからずっと任せておけるというわけだ。
ベントレーの最新モデルで長距離ドライブすると、いつも思うことがある。距離が精神的に短いのだ。だから、結局、疲れない。500kmのドライブを楽しんでなお、目的地で次の何かに取り組む精神的、肉体的余裕が残っている。
筆者が優れたGTカーに好んで乗る理由でもあった。
文/西川 淳 写真/橋本 玲 編集/iconic