電気自動車をアピールしない仕立てが好ましい

BEVなので静かなのはもちろんあたり前なのだが、e-tronスポーツバックは静音性の高いアコースティックサイドガラスを採用し、バーチャルエクステリアミラーなどによってCd値は0.25にまで低減されたことで高速道路を100km/hで巡航するくらいでは風切り音もほとんど聞こえない。さらにタイヤにも吸音スポンジが仕込まれており、その静粛性の高さはフラッグシップサルーンのA8をも凌ぐものだ。さらに足回りはエアサスペンションを装着しており、乗り味はとにかく滑らかだ。
エネルギー回生に関しては、ステアリングに備わるシフトパドルを使って3段階の調整が可能だが、いわゆるワンペダルフィーリングとよばれるようなアクセルオフで完全停止するような仕様にはなっていない。
ただ実際はマイナス0.3Gまでの減速であればモーターの回生だけで賄われており、仮にドライバーがブレーキペダルを踏んでいたとしても物理的なブレーキは作動していない。これで日常の使用シーンの約90%をカバーしているという。0.3Gを超えてはじめてメカニカルブレーキが制動をはじめるのだ。
高速道路などでは自動モードを選択してACC(アダプティブクルーズコントロール)を使用するのがスマートだ。ミリ波レーダーによって前のクルマとの距離をセンシングしながらクルマが自動的に回生のレベルを調整してくれる。その動作は極めて自然なもの。

充電に関しては、左フロントフェンダーにある充電ソケットがCHAdeMO規格の急速充電(50kWまで)に対応。また右フェンダーは200Vの普通充電用だが、標準の3kWだけでなく、日本向けにオプションとして8kWの充電器が用意されている。これを使用すれば、約11時間で満充電にすることが可能となる。夕方帰宅してひと晩充電すれば朝には満充電になっている計算だ。
e-tron スポーツバックは、ことさら電気自動車であることを強調していないのが好ましい。内外装の質感の高さはアウディクオリティで、とにかく静かで滑らか。自動車メーカーが本気でBEVを作るとこうなるというわけだ。
文/藤野太一 写真/郡大二郎 編集/iconic