頼もしさを加えた、BMWらしさに溢れる走り
スタートボタンを押した直後に、エンジンが軽く「ブルンッ」と身震いするのはディーゼルの面影を感じさせる部分だけれど、その痕跡が認められるのはこの瞬間くらいで、あとは本当に“ディーゼル臭さ”を感じない。それは、かつてのディーゼルエンジンが黒煙とともにまき散らしていたあの独特の匂いがないというだけでなく、とにかく静かで振動が少なくて、ディーゼルっぽくないのだ。
レッドゾーンの始まりだって5000rpmと驚くほど高い。さすがにこの5000rpmに近づくと、エンジン回転の上昇の仕方がちょっと鈍くなったかなあと思わなくもないけれど、それでもスムーズに回り続けるんだから驚くしかない。
もちろん、ディーゼルが得意とする中速域のモリモリ感は健在で、高速道路を走行中に上り坂に差し掛かっても、シフトダウンすることなくそのままのギアでグイグイ上っていってくれる。同様にして追い越しも楽々。なにしろ、最大トルクは“ひとグレード上”にあたるX4 xDrive30iの350Nmを凌ぐ400Nmを発揮するのだ。頼もしさのレベルが一段上といっても間違いないだろう。
乗り心地はBMWらしくちょっぴりソリッド。でも、ボディがしっかりしているので、路面から強いショックを受けてもイヤな振動が残ったりしないから嬉しい。しかも、ダンパーがいい仕事をしてくれているので、スピードを上げてもフラットな姿勢を崩さない。長距離を走っても、きっと疲れにくい足回りだ。
ハンドリングは、直進状態から少し切っただけでも正確に反応するBMWらしいもの。だからといって過敏だったり神経質だったりしないのは、アウトバーンを何百kmも延々と走り続けることを前提に開発されたドイツ車に相応しい味付け。これだけしっかりした足回りだからコーナリングの安定感だって上々。そういえば、ブレーキペダルの剛性感が高く、ペダルを踏んだ量に対して制動力がリニアに立ち上がっていく点も、いかにもBMWらしい。
にもかかわらず、X4 xDrive20dは695万円、X4 xDrive20d M sportは774万円と、838万円のX4 xDrive30i M sportよりぐっとお買い得。燃料代がいちだんとお手頃な点を含め、X4を買うならディーゼルモデルが狙い目といえそうだ。
文/大谷達也 写真/茂呂幸正 編集/iconic
※表⽰価格は税抜き