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野本弘文さん

加藤 東急文化会館の時代から70年余りが経って、消費者の価値観はモノ消費からコト消費に変わっていますが、街づくりも変わった部分はあるんでしょうか?

野本 時代が変わっても「新しいものが欲しい」という人間の欲や本質は変わらないと思っています。ただ、もう十二分にモノもコトも足りている時代なので、私がよく言うのは「思い出を買ってもらうストーリーをつくろう」と。歩いて、見て、「記念に何かを買おう」という気持ちになってもらうことが大事じゃないか。例えば渋谷に来た記念にハチ公のクッキーを買うようなことなんですが、あれを地方で売っても誰も買わないですよ(笑)。

加藤 確かに私も夏休みに海外に行くことができたときは、「この旅の思い出に」とバッグを買ったりしましたね(笑)。

野本 そうして買ったものは使うたびに、訪れた場所の記憶がフラッシュバックして幸せな気分になりますよね。私が2011年に社長になったときも、楽しい街を創造するためにわかりやすいキャッチフレーズを掲げたいと思って、「住みたい沿線日本一」「訪れたい街日本一」「働きたい街日本一」という「三つの日本一」という目標をつくりました。「働きたい街日本一」という点では、2015年に駅直結の複合施設として全面開業した「二子玉川ライズ」は、楽天さんに本社を移転していただいた相乗効果もあって、開業前の乗降客数を大幅に上回る結果になりました。もともと働く街というイメージは二子玉川にはありませんでしたが、「自然がある環境で働きたい」というクリエイティブ業界の方々が、とはいえ田舎の自然の中ではなく、一歩外に出れば世の中がどういうファッションやライフスタイルを嗜好しているのかを感じることができる、そんなところをご支持いただいたのだと思います。そういう意味では、渋谷という街も、ITをはじめ多くの起業家が集まってきますが、同じ理由で、例えば大手町より世の中の新しい流れを日々感じることができるからだと思っています。

加藤 「三つの日本一」というスローガンをはじめ、野本さんのアイデアや原動力はどこから湧いてくるんでしょうか?

野本 ひとつは両親の影響でしょうか。私の両親は福岡県の小さな町で酒屋と果物屋を営んでいたんですが、頻繁にウインドウや看板や棚のレイアウトを変えていたんです。一度「なんでそんなにお金をかけて変えるのか」と聞いたことがあるんですけど、親父が「お客っていうのは飽きるものなんだ」と。そういう意味で建物は50年に一度くらいしか変えられませんが、中身を変えていくことは常に必要だという意識が植え付けられました。人間は変化を求める唯一の動物と言ってもいいくらいですよね。



SDGsトレイン2020

持続可能な未来を目指してラッピング列車「SDGsトレイン2020」が運行開始

東急グループは、阪急阪神ホールディングスと協働し2020年9月8日より東西同時にラッピング列車「SDGsトレイン2020」の運行をスタートした。本列車は走行にかかる電力をすべて再生可能エネルギーで賄い、また、東西で運行することにより、SDGsの認知度向上を図るとともに、SDGsの達成に向けた取組が広く社会に普及し、持続可能な未来を創造していくきっかけになることを目指している。

後編に続く

※表示価格は税抜き
[MEN’S EX 2020年11月号の記事を再構成]
撮影/前 康輔 スタイリング/後藤仁子 ヘアメイク/森ユキヲ 文/岡田有加(81)

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