「カヌーに導き支えてくれた父には感謝しかありません」(羽根田さん)
単身スロバキアに渡り武者修行 ジャガイモで世界に挑む
丸山 中欧に位置するスロバキアは日本ではあまり馴染みがありませんが、一体どんな国なんですか?
羽根田 言葉はスロバキア語です。最初は片言の英語で会話していましたが、滞在1年でスロバキア語を話せるようになりました。
丸山 食べものはどんなものを?
羽根田 主食はジャガイモです。
丸山 慎ましいですね。
羽根田 僕は「郷に入りては郷に従え」という言葉を大切にしています。スロバキア人がジャガイモを食べて強くなれるんだから、僕も強くなれないはずはないと。たまにびっくりするような料理もありますよ。煮た豆と酸っぱいパンだけのワンプレートとか。食はロシアに近いかもしれませんね。
丸山 それでもベストパフォーマンスを発揮できる力を培ったんですね。
羽根田 僕にとっては強い人こそ正義。自分のこだわりや思いつきを下手に実践するよりも、とにかくカヌーに強いスロバキア人の生活を実践して、彼らになりきろうと考えたんです。
丸山 たくましい! 羽根田さんは肝が座っていますね。
羽根田 最初の3年間はスロバキアの地方に滞在しながら、北京五輪の練習に打ち込みました。アジア人が珍しくて、街中を歩くと子どもが集まってくるような田舎でしたね。その後は首都ブラチスラバの大学に進学して、大学院まで通いました。
丸山 僕も若いうちに、海外に行っておけばと悔やまれますね。海外の大学からいくつも推薦入学のお誘いがあったけれど、ゴルフに邁進するなかで学業との両立がイメージできなかった。渡米したのは、実に30歳を過ぎてからです。
後編に続く
※表示価格は税抜き[MEN’S EX 2020年9月号の記事を再構成]
撮影/筒井義昭 スタイリング/松純〈丸山さん〉ヘアメイク/古口精樹〈羽根田さん〉 文/間中美希子 撮影協力/Bar S 資生堂パーラー