走りの良さはライバル達が羨むほど
4世代目となる5シリーズ(E39型)をベースとしたBMW初のSUV、X5は、他ブランドのモデルとは違うことを強くアピールするために、あえてSAV(スポーツ・アクティブ・ビークル)というジャンルを名乗った。
実は当時のSUVは、(先に挙げたモデルでも)オフロード走破性を少々スポイルしたとしてもあからさまに手放してはいけない、そんな風潮があった。だから、この後に登場するVW トゥアレグやポルシェ カイエンもオフロード性能を誇ってデビューしており、昨今ではそこまで語らなくてもいいのではないかと思えるのだが、いまだにそれを謳っているのは、そんな生い立ちもあってのこと。
一方で、昨今では多くのSUVがスポーティな走りを手に入れており、BMWブランドだからスポーティであるとは限らなくなったが、いまだにBMWがSAVを用いるのは、やはりその生い立ちから来ている。
そのフォルムは、ベースとなった5シリーズよりもホイールベースを10mmショートとしながら、全長は100mm以上短くなる4665mmとしたコンパクトスタイルとしたことがポイント。外装では、BMW流であるヘッドランプからテールランプを繋げるようなキャラクターライン、当時SUVの流行りであった厚ぼったさではなく、すっきりとしたフェイスデザインなどによって、スポーティかつ斬新さをアピール。
さらに走りに関しては、当時のライバル、特に先に挙げたモデルと比較すると異次元といえるほどのスポーティさをアドバンテージとしていた。
5シリーズのコンポーネントを多く流用していることもあるが、重心高のあるモデルならではのハンドリングはそれを嫌うのではなく多少のロールを許容したもので、コーナリングでスタンスがぴたりと決まるスタイルは、まさにBMWそのもの。ボディサイズを小さくしようとしたことも相まって、テンポ遅れや余計な動きを上手く抑え込んでいるところを含めて、美点は数多くあった。
その走りは、いくらラグジュアリィを謳おうとも、ピックアップトラック派生であったり、ヘビーデューティを語るモデルでは手に入れることが難しいスポーツ性能であり、ライバルが羨ましがるほどであり、ベンチマークとされたことは言うまでもない。逆にいえば、X5は、オフロードにおける走破性を強く求めなかったからこそ、このスポーティさに入れられたとも言える。
当時、このX5をテストドライブして強く印象に残っていることがある。オンロードでのスポーティさに感心しつつ、フラットダートに足を踏み入れたところ路面トレース性や接地感は、その印象を大きく変えるほどの変化を見せず、砂利道なのにハンドリングに愉しさがあふれており、驚いた。そして、いいサスペンション(シャシー)とは、路面状況の違いに大きく左右されずに、優れたハンドリングを多くのシーンで提供してくれるということを知り、その後の自動車ライターとしてのインプレッションする際の自分のスタンスに、大きな影響を与えてくれた。乗り心地については、当時のSUVとしては固めではあったが、それでも17インチで65扁平サイズだったこともあり不快を感じさせず。ラダーフレームを持ちながら無理矢理に低扁平率を謳うタイヤサイズを装備したモデルとは雲泥の差があった。