2モーター式ハイブリッドでEV走行がより長くなった
試乗車は、シルバーメタリックのボディにライムグリーンの差し色が入った「ネス」のハイブリッド、FF仕様だった。室内に乗り込んでまず印象的なのは、視界が広く、開放感にあふれていること。従来の半分以下の厚みになったというAピラーや、メーターナセルなどもなく見切りのよい水平基調のインパネが効果を発揮している。また大ぶりなシートはゆったりと座り心地がよい。フロントシートには骨盤から腰椎までを樹脂製マットで支えるボディスタビライジングシートをホンダとして初採用したという。
ハイブリッド(e:HEV)のパワートレインは、1.5リッターハイブリッド+電気式無段変速機の組み合わせ。駆動方式はFFと4WDがある。従来モデルのハイブリッドは、1モーター式で7速DCTを組み合わせていたのに対して、新型はインサイト用のパワートレインを小型化した2モーター式を採用する。これにより長くEV走行が可能になった。
アクセルにゆっくりと力を込めれば、EVモードでなめらかに動きだす。モーターが最大トルク253Nmを発揮するだけあって、動き出しからとても力強くスムーズだ。市街地をゆっくりと走っているぶんには、ほとんどエンジンが始動することもない。もちろん、より加速したいシーンでアクセルを大きく踏み込めばエンジンが始動するが、うまく協調制御されており、唐突にエンジンが吹き上がってそのギャップに驚くようなこともない。基本的にはエンジンで発電しモーターで走行するシリーズ式ハイブリッドで、状況に応じてEVモードや、高速道路などではエンジンで直接タイヤを駆動するモードを最適に使いわけている。
足回りではベーシックが15インチなのに対して、「ネス」は16インチタイヤを標準装備する。低速域では少々かためな印象だが、ボディ剛性も高く、ハンドリング性能も良好だ。このモデルにはよりクイックなVGR(可変ステアリングギアレシオ)まで備えているというから、このあたりはさすがホンダといったこだわりだ。
使い勝手の良さではライバルを圧倒
カタログ燃費はWLTCモードで27.4km/l、JC08モードなら35km/lと、もはやこのクラスでは30を超えても驚かなくなってきた。燃費面でみればさらに上をいく新型ヤリスには少し劣るものの、先述した視界の広さや開放感、伝統のセンタータンクレイアウトによる、後席をフラットにしたときの広さや、後席座面の跳ね上げが可能なことによる日常での使い勝手のよさではライバルを圧倒する。また、自動ブレーキなど、安全運転支援システムHonda SENSINGを全車に標準装備する点も重要なポイントだ。
プレスリリースには新型では“心地よい視界”、“座り心地”、“乗り心地”、“使い心地”の4つの心地よさにこだわったとある。 歴代でもっとも“心地のいい”フィットに仕上がっているのは間違いない。
文/藤野太一 写真/柳田由人 編集/iconic