ヴィンテージウォッチには、一期一会の楽しみがある
西口 時計を選ぶ際、松山さんはどういったことを基準にしてらっしゃいますか?
松山 やっぱり、自分に似合うかどうかということをまず考えますが、あとは歴史的な価値があるかどうかということも重視していますね。たとえば’80年代にフランスのニームという街で買った’40年代のカルティエなどは大切にしている一本です。ちなみにニームというのは“デニム”生地の発祥地として有名ですね。そこで入ったヴィンテージショップに、遠目からでも存在感を放つカルティエがあったんです。聞くとそれはプラチナケースで、おそらく特注で作られた大変希少なもの。価格もかなりのものでしたが、これは買わねばと入手を決意しました。ちなみにその後、ニームの街は洪水に襲われてしまったんです。もし自分があの時、これを購入していなかったら、こいつは水に流されて失われていたかもと思うと、余計に思い入れが湧く一本ですね。
西口 興味深いエピソードですね。
松山 西口さんはファッションのプロでいらっしゃいますけれど、時計選びも洋服とのコーディネートを念頭に置いているのですか?
西口 そうですね。ケースの素材や形状、文字盤のデザインなどを吟味して、自分のスタイルに合うものを選んでいます。基本的にはクラシックなデザインが好みなのと、ゴールドケースを身につけることが多いですね。あとは、やはり可能な限りコンディションがよいものを選ぶようにしています。ヴィンテージウォッチは一点ものですから、こだわって選んだものはひときわ愛着が湧きますよね。女性にはなかなか理解されないですけれど(笑)。
松山 おっしゃるとおりです(笑)。