誤解をしてほしくないのは、「結果を出す人は話し上手だ」と言いたいわけではありません。そうではなく、
結果を出す人は、「例外なく聴き上手」 だと言いたいのです。
仕事で重要性が高いのは「話す力」より「聴く力」
もちろん、話題が豊富で、場を盛り上げられる人は魅力的です。論理的に話す人は、理知的な印象を与え、説得力があります。
ただ、私の経験上、仕事では「話す力」より「聴く力」のほうがより重要性が高いと断言できます。なぜなら、「相手の話を聴いてから始める」のが、コミュニケーションの鉄則だからです。
仕事では、相手と「信頼関係」を築くことが大切です。上司、先輩、同僚、取引先の相手、お客様……仕事で接する人は立場も年齢も性別もみんなバラバラです。
そうした様々な立場の人と信頼関係を築くためには、相手の気持ちや考え方、価値観といったものを理解しなければ不可能です。
だからこそ、コミュニケーションにおいては、相手の話を聴く姿勢が重要なのです。
私は、管理職向けの研修も数多く行なっています。
上司になると、部下に指示をすることが当たり前になります。そのため、ともすれば、「指示命令」が中心の一方的なコミュニケーションになりがちです。
そこで研修では、まず「部下(メンバー)の話をしっかり聴いていますか?」と質問をすることから始めるようにしています。
管理職の方たちから返ってくる答えは、だいたい決まっています。
「効率を重視しているので指示命令が中心」
「世代が違い、話が合わないため、ムダな会話はしない」
こうした理由から、部下の話をしっかり聴く機会が圧倒的に不足しているのが現状です。自分中心のコミュニケーションスタイルになっているのです。
管理職研修でアドバイスする「聴く力」を伸ばす4つの方法
本来のリーダーシップとは、指示命令だけでなく、「納得」と「共感」によって人を率いていくものです。
そもそも、「指示命令」が上手く機能するためには、つまり、人を動かすためには、上司と部下の信頼関係が不可欠です。信頼関係を築くためには、相手の話を積極的に聴こうとする姿勢、「聴く力」が必須なのです。
研修で管理職の方たちにアドバイスするのは、次の方法です。
1、人は、納得し腹落ちしないと行動に起こしにくいことを理解する。
2、まずは、「君なら、この状況でどうすることがベストだと思う?」と尋ねる。
3、部下の意見に対して、アドバイスを行ない、部下の意見を強化する。
4、部下がやり方や進め方がわからない場合は、具体的に教える。その後、相手の理解度を必ず確認する。
コミュニケーションは、一方通行ではなく、双方向で行なうこと。
それによって、「コミュニケーションギャップ」を防ぐことができます。「コミュニケーションギャップ」は解釈の違いにつながります。部下が誤った行動をとることを未然に防ぎ、機会損失を防ぐ意味でも、効果的な方法です。
信頼される人は「目で聴き、耳で聴き、心で聴く」
相手の話を「聴く」ためのコツをご紹介しましょう。
相手の話に積極的に耳を傾けることを、「アクティブリスニング(積極的傾聴)」といいます。相手の話を注意深く聴いている姿勢を、「言葉」と「態度」で表すことで、相手が話しやすい状態をつくることです。
私たちはあまり、自分の表情やしぐさなど、「言葉を使わないコミュニケーション(非言語)」に注意を払っていません。アクティブリスニングでは、その非言語コミュニケーションを意識することが大切です。
アクティブリスニングのコツは、次の4つです。
1、相手の話に耳を傾けて、最後までしっかりと聴く。
2、相手の話を途中でさえぎらない、否定しない。
3、表情やしぐさ、声のトーンなど、相手の様子に注意を払う。
4、相手の言葉を受け止め、理解し、共感する。
「聴」という漢字は、「耳」「目」「心」の3つの漢字から成り立っています。
相手の話に耳を傾け、相手の考えを引き出し、理解することを心掛けましょう。
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大西みつる [人材・組織開発コンサルタント]
1961年大阪府生まれ。株式会社ヒューマンクエスト代表取締役社長。立命館大学デザイン科学研究センター客員研究員。立命館大学経済学部卒業後、本田技研工業に入社。鈴鹿硬式野球部でプレーした後、マネージャー、監督を歴任。チームを都市対抗野球大会で日本一に導く。社業に専念してからは、日米双方で人材開発や管理職のリーダーシップ開発に取り組む。2009年、株式会社ヒューマンクエストを設立。年間160日のコンサルティング、企業研修を行ない、年間延べ3,500人以上の管理職層と向き合う日々を送っている。研修実績は、SMBCコンサルティング、全日空、アステラス製薬、ハウス食品、日本テレビ、キヤノン、スズキ自動車、NTTドコモ、江崎グリコ、アイシン・エィ・ダブリュ、東京ガス、山善などの大手民間企業をはじめ、ベンチャー企業及び各種団体多数。