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アイビールック再見

ボクがアイビーの洗礼を受けたのは1965年。小学校3年生の時である。当時、アイビー好きの10歳年上の兄が愛読していた『メンズクラブ』や『TAKE IVY』による影響だが、’60年代後半に入ると社会現象になるほど一世を風靡したアイビーブームも急速に下火に。時代はベトナム戦争の拡大とともに学生運動が活発となり、世の中のファッションもフォークインフルエンス→ピーコック革命→ジーンズにTシャツブームと、反保守的な流れへと傾いていった。そんなアイビーを忘れかけていた1971年。映画『ある愛の詩』(アメリカ。1970年)が日本で公開。当時、Tシャツにジーンズが若者の象徴とされる中、頑にボタンダウンシャツとコットンパンツにこだわる変わり者のアイビーチューボーのボクは、待ってました! とばかり、このハーバード大学を舞台にした悲恋物語の映画が楽しみで仕方なかった。

が、しかし……。メンズクラブやTAKE IVYによって’60年代アイビーが刷り込まれていたボクは、オリバー役(裕福な家柄で代々ハーバード大出身という生粋のアイビーリーガー。のちに弁護士となる)を演じるライアン・オニールの長髪とアイビーらしからぬ着こなし(’60年代っぽくないという意味で)にちょっとガッカリ……。物語には泣けたけど、着こなしには泣けなかった。

そんな『ある愛の詩』を40数年ぶりに観た。いや?、誤解してました。今改めて観るとメチャクチャアイビーだね(笑)。当時長髪と思い込んでたライアン・オニールの髪型も十分アイビー圏内だし(てか薄毛となった今、このボリュームのある毛髪がウラヤマシィ?)、ボタンダウンシャツの襟ボタンを外すテクニック(当時は外すべからずと思っていた)も今は普通にやってるし、何ら問題なし。それよりむしろ驚いたのは、ヒッピー文化花盛りの1970年のアメリカだというのに、ハーバードの学生の間でまだドレスコードらしきものが守られていたということ。週末、ジェニー(アリ・マッグロー)とデートする際はちゃんとジャケットを羽織るし、彼女の実家を訪問するときやジェニーの演奏会を聴きに行くときはツイードジャケットやブレザーにレジメンタルでタイドアップだしね。牧師立会いの下、ジェニーと略式の結婚式を挙げる際はグレーのモーニングをイメージしたグレーサキソニーフラノのトラッドな3ピースと、学生結婚としては特上!

ハーバードを卒業し弁護士として社会へ出ると、フレッシュマン時代はペンシルストライプだったスーツが2、3年経ちチョークストライプのダブルブレストスーツへと格上げ。チューボーだった公開当時はピンとこなかったけど、これはドレスコードマニュアルとしてもよく出来た映画だね。必見。


今月のシネマ

『ある愛の詩』(1970)



[MEN’S EX 2019年3月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)

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