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カントリーシーンに見る英国貴族文化

我々日本の庶民生活とはまったく無縁の英国貴族社会。そもそもカントリーハウスとはどういうものなのか? そこで招待客と過ごす昼間の服装やディナーの服装。食前食後の楽しみ方。それらのお膳立てをそつなくこなす執事や使用人の働きぶり。さらにはシューティングパーティ(キジ猟)など、ミステリーの謎解き以上に見所満載で興味は尽きない。

でも、オレにとってこの映画の一番の見所は、日本ではまず見ることがない”ドライビング”という勢子猟のシーンだ。

日本で鳥猟を行う場合、鳥猟犬(薮から鳥を追い出し、撃ち落とされた鳥を回収)を連れて猟場を歩く歩行猟法(ラフシューティング)が一般的だけど、英国貴族たちは自分の領地内に鳥(パートリッジ、グラウス、キジなど)を放鳥し、猟場では勢子(棒などを使って草むらから鳥を追い出す役)と射手(当主や招待客)が二手に分かれ、射手は勢子が追い出した鳥を迎え撃つ、それがドライビング。ま、早い話がお殿様の狩猟なんだよね。

で、貴族たちが愛用する散弾銃がこれまた凄い。映画の中でブランド名は明かされないけど、おそらく「ジェームス・パーディ」や「ボス」あたりの通称”ロンドンガン”といわれるビスポークの高級散弾銃に違いない。それらは二連銃といって弾は二発。パーンパーンと引き金をひいたらまた弾を二発装填するのだけれど、射手はそれを自ら行わず、隣にローダー(装填手)を従えてペアの銃を交互に使うというスタイル。ちなみに銃のお値段ですが、ペアでオーダーすると軽く家が一軒建っちゃうくらい。もちろん一丁でもビスポークは可能なんだけど、それだとお付きがいないことがバレちゃう。つまり、ペアでオーダーするということは貴族の証でもあるのだ。

さすがに日本人でペアでオーダーする人はいないだろうと思ったら、これがいるんだよなぁ。誰とは言えないけど名門企業の会長さんで、事実、福島の自分の広大な敷地に放鳥して、隣にローダーを従えてペアガンでキジ猟を楽しむ英国貴族みたいなお殿様。で、ひょんなことから知り合いになったら「キミにうちの犬を一匹差し上げるよ」と。「ただし、それにはうちのクラブメンバーになってもらわないと」と。えっ、クラブメンバーって何ですか?と伺うと、「うちの忘年会に参加するとか、キミならうちの犬たちを描いてくれるとか」って、それってもしかして使用人になれってこと?!もちろん丁重にお断りしましたが、どうせ階級社会のない日本で暮らすなら、格好だけでもなんちゃって貴族側でありたいよな……。


今月のシネマ

『ゴスフォード・パーク』(2001)



[MEN’S EX 2018年12月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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